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2023年05月25日
No.10003513

特集 生産性向上のためのデジタル活用
RPAが企業の新たな価値を創る
㈱ドットコネクト 代表取締役 兎澤直樹さん

RPAが企業の新たな価値を創る
とざわ・なおき 1987年埼玉県生まれ。現・東京都立大学卒業後、船井総研に入社。中小企業の経営コンサルタントとして9年間従事。2019年ドットコネクトを創業、代表取締役に。日経ビジネススクールオンラインや東京商工会議所などの講師を務める。『サバイバルマーケティング』など著書多数。

RPAとは、Robotic Process Automationの略。PCで行う定型業務を自動化するアプリケーションのことで、請求書の作成やシステム間でのデータ転記入力、WebにあるデータのExcelでのリスト化など、煩雑な業務を短時間で処理してくれる。業務時間や人件費を削減し、より生産的な事業活動に時間を割けるようにするのがRPAの役割だ。RPAの導入支援と運用サポートに特化した事業を展開するドットコネクトの代表取締役 兎澤直樹さん(写真)に導入時の留意点や運用のポイントを聞いた。

RPAによる業務自動化を
成功させるための秘訣とは


当初、主に大手企業で導入されていたRPAは、2019年頃から中小の企業でも活用されるようになりました。MM総研の資料「日本におけるRPAの導入率」によれば、年商50億円未満の企業で20年度に11%だった導入率が、22年度には28%に達する見込みです。

ところで、別の調査では、RPAを導入したものの、うまく活用できていない企業が4割もあることがわかっています。何のために使うのか、そして自分たちが何をしなければいけないか、つまり、「RPAとどう向き合うか」をきちんと意識しないと、役に立たないツールなのです。

RPA導入を成功に導くためには、トップが導入によって得られる企業のビジョンをしっかり発信することが大切です。RPA導入による効果を明確にすることは会社の本気度を伝えることになりますから、社員のモチベーションが上がり、削減できる時間や生み出される新たな価値も増えます。逆にトップがRPAとの向き合い方を明確に示さないと、社員との温度差が広がるばかりで、成功しにくくなります。

また、RPAの効用を具体的にイメージすることも大切です。例えば、「定時に帰れるようになる」「売上げに繋がる業務を増やしたり、新規事業を始める」「顧客へのフォローをさらに厚くする」「人材教育に力を入れる」といった具合です。今まで属人性が高かった業務を標準化して、「ベテラン担当者が異動や退職した場合でも引き継ぎできるようにする」ということでもいいでしょう。

自動化すべきことは、柔軟な発想をもち、社内の業務をよく観察すれば見つかりやすくなります。中長期的な視点で運用効果を高めるには、最初は「今まで人がやっていた事務系の仕事」、次に「今まで人がやっていた売上げに関わる仕事」、そして、「機械でなければできない煩雑で拡張的な仕事」へとステップアップしていくといいでしょう。


現システムを大きく変えず
複数のツールをつなぐ


RPA導入のメリットのひとつは、「自社の既存の経営基幹システムやクラウドツールなど、今の環境をあまり変えずにさまざまな自動化が図れる点」です。

RPAを導入していない会社の多くは、複数のシステムやアプリを人の力で運用することで業務フローが成り立っています。例えば、「Webで注文が入ったら、Excelに入力して、メールで注文情報を全社で共有する。その後、受発注システムに入力して、顧客管理システムに入力。月末には経理ソフトに入力して請求書を発行する」といった具合です。同じような入力作業を繰り返し行わなければならず、時間も労力もかかります。

こうした業務を一元化するために、フルスクラッチでシステムを開発することもできますが、膨大な費用がかかります。かといって、API連携やCSV連携できるようなクラウドツールだけでは、業務フローのすべてをまかないきれません。だから、移管が難しい専用システムや低価格なクラウドツールなどもうまくつなぐことのできるRPAを導入することが現実的なのです。

顧客に寄り添いながら
サポートする業者を選ぶ


業者選びはRPA導入成功のための重要な要素になります。「格安料金でフルサポート」を謳いながら、実際には何もしてくれない業者もあれば、利用料金が他社よりも多少高くてもクライアントに寄り添ってサポートしてくれたり、アップデートの際もユーザーの声を反映してくれる業者もあります。だから、サポートや「無料」の内容を導入検討の際に確認することをお勧めします。

導入前に、「30日間無料トライアル」のような制度を利用してみるのもいいでしょう。ただし、レクチャー抜きで操作するのは難しいため、きちんとレクチャーをしてくれるかどうかを確認しましょう。

RPAの導入後、自分たちですべきことのひとつにシナリオ作成があります。簡単に言うとRPAに作業を覚え込ませることですが、うまくいかないという状況は必ず起こります。分からないことが発生した時に、親身にスピーディーに、的確に意図を汲み取って解決してくれる業者かどうかはとても重要です。


RPA担当への“報酬”は
スキルを得た達成感でも良い


私がRPAの導入支援をしている企業で、社歴が長いのに特に抜きん出たスキルがない女性社員がいました。ところが、RPAのシナリオ作成を担当させたら、驚くほどの仕事ぶりを見せてくれたそうです。元々システムに詳しいわけではありませんでしたが、パズルのような面白さがあり、解くたびに大きな達成感を得られたからでした。

新しいことに取り組む際の頑張りに対する報酬は、必ずしも給与面や肩書きでなく、「組織の中での居場所」だったり、「スキルを磨いた達成感」でも良いでしょう。この事例では、上司が全社会議で発表の場を作ったり、業務自動化の過程を動画にまとめて公開したことが、彼女の仕事のモチベーションになりました。

社員が20人程の会社ですが、「自分の部署で自動化したいこと」を募ったところ、40以上のアイデアが寄せられました。RPAの重要性が社内で認知されたためで、その後も順調に業務の自動化を進めています。

RPAによる自動化は、部署ごとに別々に行っている類似の業務も一本化・効率化しようというものですから、部署同士で縄張り争いをしていては前に進めません。委員会などの部門横断的な組織をつくり一元的に管理すべきです。部署間のコミュニケーションを図る橋渡し役もするので、RPAの専門家を育成するのもこの部署がいいでしょう。垣根をつくらない風通しの良さが、RPAの推進には大いに役立ちます。
       ◇
「RPAは、人間の仕事を楽にするツール」と意識することが必要です。そうすれば、自分たちが本来やるべき業務とは何なのか、空いた時間で何ができるのか、会社の付加価値を生む仕事とは何なのかを考えられます。RPAを推進しやすいのは、「企業競争力を維持するための本質的な価値」を認識している会社です。それは、RPAが自分たちのコアな価値や存在意義を探すためのツールだからなのです。

『自動化経営の教科書』兎澤直樹著・日経BP刊 1760円(税込)。
「業務でRPAを組んでいるエンジニアです。本書はRPAを導入したい企業や、
どんなものか知りたい人たちにはとてもおすすめです」(Amazonの口コミより)

※『月刊アミューズメントジャパン』2023年5月号に掲載した記事を転載しました。


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