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2025年02月27日
No.10004758

高付加価値型店舗で新たな来店動機の創出を|マルハン北日本カンパニー 三原 太郎 部長インタビュー

高付加価値型店舗で新たな来店動機の創出を|マルハン北日本カンパニー 三原 太郎 部長インタビュー

INTERVIEW

マルハン北日本カンパニー
執行役員 開発戦略部部長

三原 太郎 部長

マルハン北日本CがM&Aを加速させている背景には、自社の成長だけではなく、遊技人口の拡大という狙いもあった。同社の出店戦略、そして取得した物件をどのようにリブランドしてきたのか。同カンパニーの出店のコア部分を担う開発戦略部の三原部長に聞いた。 聞き手・文=小川竜司(本誌)

──マルハンの中でも、北日本カンパニーの店舗出店ペースは突出しています。この出店ペースは計画通りなのでしょうか。

三原 マルハンがカンパニー制に移行して、今年で丸4年になります。その間に北日本Cは12店舗出店しました。今年も新規オープンを複数予定していますので、目標どおりのペースです。取得物件のほとんどがM&Aです。北日本Cは事業投資をして収益を生み出し、それを次の出店につなげていくという成長戦略を描いています。逆に言えば、新店で失敗すると投資のサイクルが止まってしまうので、成功の可能性が高い物件を見極めなくてはなりません。そういった意味で出店戦略は非常に重要な位置づけです。

──元々マルハンはM&Aによる店舗取得をしてきませんでしたが、カンパニー制に移行後、北日本Cでは積極的にM&Aを進めていますね。

三原 M&Aは更地から店舗を作るより時間とコストを抑えられること、そして地域のオペレーターが増えることなく出店できるといったメリットがあります。建築コストが高まり、さらに経営環境の変化が激しい今、そのメリットは以前よりも大きく、M&Aによる店舗展開は業界の時流に沿っていると考えています。

──M&Aで取得する物件の条件はどのようなものですか?

三原 物件の良し悪しを判断する基準は、さまざまな要素があるので一概には言えませんが、ひとつは当社の投資回収ラインをクリアできるかが条件となります。収益モデルは「当社が出店した場合」に想定される稼働・粗利・利益で、そこにリブランドコストなど含めた投資額をシミュレーションしたうえで、のれん代を算出します。もちろん、相手の法人様の希望額があれば、それを基準として検討することもあります。物件によっては店舗単体での収益性だけでなく、そのエリアの既存店への影響度なども加味して判断するなど、いろいろな角度から価値を検討します。その結果、物件が持つポテンシャルを最大限に評価した価格が提示できるのは当社ならではの強みだと思います。

──これまで振り返って印象的なM&Aはありますか?

三原 どの店舗も印象的ではあるのですが、強いて言えば2022年に取得した『マルハン盛岡みたけ店』でしょうか。大きな取引でしたし、短期間で決断しなくてはならない局面だったので、社内調整から資金繰りまで含めて難しいディールでした。結果的には念願であった盛岡市への出店を果たすことが出来たことに加え、この案件が一つのきっかけで、物件情報が集まるようにもなりました。また社内にもM&Aに対する本気度、あるいは新しい方向性を示すことができ、社内・社外に風穴があけられた案件だと自負しています。

──M&Aで取得した店舗をリブランディングしていく際に、どのようなことを心がけていますか?

三原 私たちはリーディングカンパニーとして遊技人口の拡大を牽引していきたいと思っています。そして、その先に「マルハンファン」を創っていきたい。そのために、これまでになかったパチンコホールでの体験価値を創出することが必要だと強く感じています。ですから、M&Aで取得した店舗をリブランドする際は、以前と同じようなホールを作るのではなく、トライアル的にでも新しい価値づくりにチャレンジしていきたいと思っています。




ファンに支持される店舗を作り
業界全体の活性化にも



──昨年は11月、12月と年末に3店舗を出店しました。それぞれのお店の特徴を教えていただけますか?

三原 11月にオープンした『マルハンSLOT仙台一番町店』は、設置台数は約400台と小規模ではありますが、繁華街の中心地では大型物件はほとんどありませんから、新たな出店モデルを模索するという意味合いもあります。店舗の特徴としては、北日本Cとして初のパチスロ専門店。若者向けの店舗デザインを採用しスマスロ比率の高さ、セルフポスなども導入して「オールスマート化」を掲げました。また、今年4月に宮城県仙台市を本拠地とするマルハン北日本Cの社会人硬式野球部「GIVERS(ギバーズ)」がスタートするのですが、チームの所属選手たちを紹介するような専用フロアを作ります。今後は選手たちも店舗スタッフとして働く予定で、お客様も選手たちと交流していただき、地域をパチスロと野球で盛り上げていくという構想です。

『マルハンSLOT仙台一番町店』
北日本カンパニー初のパチスロ専門店。省人化オペレーション店舗で、若者向けの店内デザインが特徴

──『マルハン仙台苦竹店』は稼働好調のようですね。

三原 『マルハン仙台苦竹店』は空間づくりにこだわりました。私たちはパチンコの面白さを「事(コト)と場」と表現します。「事」とはパチンコ・パチスロが持つ本来の面白さ、「場」というのは空間の価値、この組み合わせのクオリティを大切にしています。「マルハンイズム」の中で、お客様への提供価値の一つとして、「刺激とやすらぎ」を掲げています。今のホールでは「刺激」という点は遊技面で提供できているとは思うのですが、「やすらぎ」に関しては提供できていないのではないか。多くの人がストレスを抱え、余暇にも「やすらぎ」を求めていることは、さまざまな調査結果が示しています。ホールの「休憩所」を「やすらぎ」に特化してみたらどうだろう、というのが今回の発想でした。今後はお客様へのアンケート、さらには脳波測定など行い、この空間がどの程度リラックス効果があるのかなど、科学的な検証も実施していきたいと考えています。

──どんな特色があるのですか?

三原 照度を落とした暗めの空間で、天井には人を癒すといわれる波紋を投影しました。ヒーリング音楽を流し、香りにはリラックスできるフレグランスを厳選するなど、五感すべてで「やすらぎ」を感じられる空間としました。サウナで整う「サ活」のように、パチンコで整う「パ活」があってもいいのではないか。来店動機として遊技による「刺激」に加え、「リラックスしにいく」という新たな理由を生み出せるのではないでしょうか。

『マルハン仙台苦竹店』
五感すべてで「やすらぎ」を提供することを狙った斬新なレストスペース

──『マルハン敦賀店』は、北日本Cになって福井県での3店舗目の新店になります。

三原 2023年にオープンした『マルハン福井舞屋店』と同じく、内装の装飾をコーポレートカラーである赤を用いずに青を基調としました。当社が協賛するプロバスケットボールの「福井ブローウィンズ」のチームカラーが青だったことも理由です。青は落ち着く色ですので、遊技空間としては適切ではないという反対意見もあったのですが、『福井舞屋店』は県下トップクラスの稼働率を維持していることもあり、最終的に青を採用しました。

『マルハン敦賀店』
福井のプロバスケットチーム「ブローウインズ」を連想するブルーのカーペット


──最後に今後の展望を教えてください。


三原 パチンコ業界は遊技人口の減少が続いていますし、近年はコロナ禍を経て新規則機への入替、新紙幣対応などのコスト負担などもあり、厳しい状況が続いてきました。マルハン北日本Cとしてはこの先もM&Aを中心に店舗拡大をしながら、新しい来店動機を生み出せるような高付加価値型の店舗を作っていきたいと思っています。できれば、こうしたノウハウやデータなども業界で共有して、お客様に喜んでもらえるようなホールを一緒に作りながら、業界全体を盛り上げていけたら、と思っています。

みはら・たろう

2003年、㈱マルハン新卒11期生として入社後、店舗、社長室、経営企画部チーフ、営業企画課課長、営業支援部部長を経て、2021年に北日本カンパニー開発戦略部部長、2024年に同・執行役員に就任。現在、㈱アンコールグループ取締役、㈱マルハンデベロップメントパートナーズ取締役を兼務。

文=アミューズメントジャパン編集部
※月刊アミューズメントジャパン2025年3月号に掲載した記事を転載しました。


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