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2018年07月31日
No.10000750

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
16年を経てIR整備法成立
[コラム]カジノ研究者の視点 

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

7月19日、参議院本会議はカジノ合法化と統合型リゾート(IR)整備を実現する「IR整備法案」が可決され、我が国は正式にカジノ合法化に踏み切った。IR整備法は国内に最大3箇所の統合型リゾートの設置を認める他、日本人のカジノ入場に6000円を課し、1週間に最大3日・1カ月に最大10日の入場回数制限を設けるなど、これから開業するカジノの運営に様々な制限を定めている。

国政において本格的にカジノ合法化の検討が始まったのは2002年の「自民党カジノ議連」の発足から。当時政権与党にあった自民党は2006年には「カジノ・エンターテイメント導入に向けた基本方針」を策定した。しかし、その翌年の2007年に行なわれた参議院議員選挙で自民党は歴史的敗退を喫し、参院議席の過半を野党が押さえる「ねじれ国会」が始まった。その後、2009年の衆院選で民主党に政権を明け渡すこととなった。そのような政治的に不安定な時期にカジノ合法化構想が前進することはなかった。

自民党に取って代わった民主党・鳩山政権においても、当時の国土交通大臣、かつ民主党における最も強力なカジノ推進派の一人であった前原大臣の下でカジノ合法化の検討が行なわれた。しかし、その鳩山政権も1年を待たずして崩壊。その後、民主党は1年ごとに総理大臣を変え、混迷の時代が続いた。このような環境でカジノ合法化構想が動くわけもなく、民主党政権下においても構想は空転し続けた。

結果的に、再び本格的にカジノ合法化の検討に動きだしたのは、民主党から自民党へと再び政権が移行した2012年以降のことだ。

安定した長期政権を築いた安倍政権は、「カジノ合法化検討」を公約に掲げて衆参合わせて4度の総選挙を戦い、今回とうとう法案を成立させた。2002年の自民党カジノ議連の発足から数えて、実に16年の月日が流れていた。

しかし、IR導入の論議は途上にある。IR整備法は、IRの整備区域の認定にあたって立地自治体における議会の承認決議を求めている。これまで国政で行なわれてきた様々な論戦は、今後はIR導入を検討する各自治体へとその舞台を移す。

特に来年は、全国自治体の議会と首長の改選が集中する統一地方選挙の実施が予定されている。カジノ反対派はすでに各地域に反対組織を形成しており、来年は選挙を巻き込みながら激しいIR導入を巡る論戦が交わされることになるはずだ。

そのような厳しい政治的選択を乗り越えて、IR推進派が「生き残った」地域のみがIR整備区域として国の認定を受けることができる。まさにこれからが、IR導入論議の正念場なのである。


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