No.10000772
木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
プロ麻雀リーグ発足と「ゼロギャンブル宣言」
[コラム]カジノ研究者の視点
一般社団法人Mリーグ機構が7月17日、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」の発足会見を行なった。会見では、リーグの発起人であり初代チェアマンに就任した株式会社サイバーエージェントの藤田晋社長が登壇。さらに日本のプロサッカーリーグ「Jリーグ」の初代チェアマンであり、日本プロサッカー界の立役者として知られる川渕三郎氏(現・日本サッカー協会相談役)がMリーグの最高顧問に就任することも発表されるなど、その本気度の高さをうかがわせる内容だった。
今年10月から公式競技がスタートするMリーグは、コナミ、サイバーエージェント、セガサミー、テレビ朝日、電通、博報堂DY、U-NEXTと、日本の各界を代表する大企業7社の所属チームからなる麻雀リーグとして発足する。
現在、日本には「プロ雀士」を認定する組織が主に6団体あるが、Mリーグに参画する各チームは既存のプロ団体から認定を受けている約2000人の雀士の中から各3名ずつ指名し、チーム制で年間成績を争う。8月7日に行なわれたドラフト会議では、麻雀愛好家として知られ、プロ資格も持つ俳優・萩原聖人氏を電通が1位指名したほか、セガサミーが3名の選手のうち2名を人気の女流雀士で固めるなど、各社各様のチーム編成が見られた。Mリーグの優勝賞金は驚愕の5000万円。これまで我が国に存在した麻雀大会の中ではダントツの高額設定であり、名実ともに国内最高の栄誉をかけた麻雀競技が今年から始まることとなる。
Mリーグの発足に関してはその賞金額もさることながら、リーグ発足に合わせて行なわれた「ゼロギャンブル宣言」も大きな話題となっている。一般社団法人Mリーグ機構は、その所属雀士に「麻雀賭博との決別」を確約する誓約書の提出を義務付けている。ご承知の通り、我が国の刑法は賭博行為を禁じており、また風営法も麻雀店に対して賞品提供の禁止を定めている。しかし、残念ながら麻雀と賭博は切っても切れない関係のまま現在まで至っているのが実態で、多くのプロ雀士は「賭け麻雀」を生業としてきた。そのような、戦後から脈々と続いてきた麻雀界を取り巻く「負の歴史」を一気に突き崩そうとしているのが、今回のMリーグ発足の「もう一つの側面」だ。
「ミスター麻雀」の異名で知られ、戦後の麻雀ブームをリードした小島武夫氏が亡くなったのが奇しくも今年の5月。それとほぼ時を同じくして「ゼロギャンブル宣言」を掲げるMリーグが発足し、今、麻雀業界全体が音を立てながら変革に向けて突き進み始めた。2018年は日本の麻雀史において、非常に重要な歴史的な年となりそうだ。