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2018年09月05日
No.10000792

IR誘致レースの有利・不利が見えてきた
[コラム]カジノ研究者の視点 

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

8月冒頭、政府・IR推進本部は全国自治体に対するIR区域申請に関する説明会を開催した。3日に分けて開催されたこの説明会に参加したのは全国約40の都道府県および市区町村の担当者。我が国の統合型リゾート導入は全国自治体から予想以上に注目されていることが判った。

ただし、国内に最大3カ所のみ認められる統合型リゾート設置のために、政府が全国自治体に対して求める基準はナマ易しいものではない。
7月に成立したIR整備法は、
(1)国際会議場施設
(2)展示施設等
(3)我が国の伝統・文化・芸術等を活かした公演等による観光の魅力増進施設
(4)送客機能施設
(5)宿泊施設

の5つを、我が国の統合型リゾート内に設置が必要な「必置施設」として定めている。

このうち特に国際会議場施設と展示施設等に関しては、政令によって具体的な数値に基づく設備要件を定めるほか、各種イベント誘致の支援体制等のソフト面での取り組みを求めるものとして説明された。特に設備規模に関しては、大都市と地方部との間に要件上の差異を設けることはなく、「我が国を代表することとなる規模」を求めてゆくと説明された。この要件は、統合型リゾート導入を目指す地方部の自治体にとっては非常に厳しいものとなる。

また、大都市部においても国際会議場施設や展示施設等がすでに存在している地域にとっては、この要件は同様に悩ましい。政府は、統合型リゾート整備計画において既存施設を活用することは排除していないが、整備区域は物理的に連続する「一団の区域」でなければならないと定めており、既存施設を活用する場合は統合型リゾートとそれら施設が隣接していることが必須となる。既存施設を活用しようとした場合、自治体にとっては区域選定上、立地に大幅な制約がかかることとなる。また、政府はIR区域整備計画の認定に際して、そこから誘引される投資の規模や経済波及の大きさを審査上の要件にするとしている。既存施設を統合型リゾートの一部として活用する場合、新規でそれらを開発する場合と比べると、自ずと投資規模や経済波及効果は小さくなることが予想される。そのため、このような計画はIR整備区域の獲得競争上、不利になることが示唆されている。

IR整備法の成立から数カ月が経ち、政府側の方針が徐々に明らかになってきた。統合型リゾート導入を目指す各自治体がそれに一喜一憂し、また明確に施設誘致上の「有利/不利」が生まれつつある。統合型リゾートが実際に開業するのは2025年前後であると予想されているが、果たしてどの地域にどんな施設が誕生するのか。政府、自治体双方から目が離せない様相だ。


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