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2018年09月26日
No.10000825

カジノにおける「GAME OF SKILL」
新たなゲーミングマシンは市民権を得られるか? 文=佐伯英隆・京都大学公共政策大学院 名誉フェロー

投石器で敵を倒すというゲームで、投石器の方向や引っ張る角度で結果が異なる。すなわち、技術介入性がある。

スロットマシンを始めとするカジノのゲーミングマシンは基本的にランダムに発信される乱数により勝敗が決まるシステムです。日本の刑法が違法とする「賭博」の定義も「偶然」の結果を争う行為とされています。即ち、博奕(ばくち)というのは、偶然という「運」を争うものであって、個々人の「技量」で勝ち負けが決まるものは、いわゆるギャンブルの範疇には入らないとされています。

ところが、最近、プレーヤーの技量(SKILL)により払い戻しが異なるゲーミングマシン「GAME OF SKILL」がカジノに導入され始め、話題になっています。小生は『カジノの文化誌』(中公選書)という著書がありますが、我が国にはカジノの歴史がなく、専門分野としての「カジノ学」なるものの研究者とは言えません。しかし今も、「個人的自由研究」(笑)の名目で、ちょくちょくラスベガスに通っています。先月、ラスベガスに行った際にGAME OF SKILLをプレイしてみましたので所感をご報告いたします。

技術によって儲けが変わる

このマシンは、プレーヤーが技術によって獲得した点数・ポイント・ボーナスなどを、「お金」の形で受け取れるものとご想像ください。カジノ側もまだまだ試行錯誤の状態かと思われますが、ラスベガスの中規模以上のカジノには1~2台設置されております。台数は少ないものの、設置場所は人が多く通る目立つ場所であることが多いことから、カジノ側としても「試してみてください」と推しているところなのかも知れません。

マシンに座り、20ドルを投入しました。ひとつの筐体内に複数のゲームが入っていて、遊ぶゲームを選択できます。小生が選択したのは投石器で敵を倒すというゲームで、投石器の方向や引っ張る角度で結果が異なります。石弾を発射したり、特別な効果がある石弾を購入するとクレジットが減り、敵を倒すとクレジットが増えるというモノです。

遊んでみた正直な感想は、一言で「面白い」です。グラッフィックやドラマ性も良くできていて、遊びとしての魅力は高い。しかしながら、全く客が付いていません。小生が初めてプレイして直ぐに遊び方、コツが判ったことを考えると、客付きの悪さの理由は、導入初期でまだ客が遊び方を理解できないからとは思えません。もっと本質的な理由がありそうです。

「興奮の場」には少し場違いか

カジノに来る客は、そもそも「運」を試しに(あるいは求めて)来るのであって、このGAME OF SKILLが与えてくれる面白さとは別種の、刺激やアドレナリン放出を求めるのではないかと思います。これは、ゲームとしては面白い反面、カジノゲームのプレーヤーにとっては、「かったるい」のです。カジノという「興奮の場」には少し場違いな感じがします。友人と来てワイワイ騒ぐようなパブやクラブでなら(そこが少額の賭けを許容してくれる場なら)、大いに将来性はあるのではないかと思いますが。

加えて、小生が20ドル投入して20分以上遊べたということは、カジノ経営サイドから見て(お客のお金を収集するマシンとして)、これは効率の良いマシンとは言えません。通常のスロットマシンでは、20ドルなど5分も経たないうちに勝ち負けが決まってしまいますので。


さえき・ひでたか
京都大学公共政策大学院 名誉フェロー・連携研究員
東京大学法学部、ハーバード大学J.F.ケネディ行政大学院卒。昭和49年通産省入省。
新映像産業室長、資源エネルギー庁国際資源課長、在ジュネーブ日本政府代表部参事官、
島根県警察本部長、通商政策局審議官などを経て平成16年退官。
京都大学公共政策大学院特別教授を経て現職。(株)イリス経済研究所代表。
著書に『カジノの文化誌』(中公選書)。


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