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2018年10月09日
No.10000845

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
ギャンブル等業界のあるべき姿
[コラム]カジノ研究者の視点 

ギャンブル等業界のあるべき姿
[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

10月5日、ギャンブル等依存症対策基本法が施行された。本法律は「ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健康を保持するとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現」を目的として、今年前半の国会で成立したもの。その公布から3ヶ月以内の施行が定められていたものである。

皆さんもご承知の通り、パチンコも含む我が国のギャンブル等業界では、現在、依存対策が強力に進められている。昨年8月には、政府・ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において、各業界における依存対策の実施が決定された。今年10月から導入が始まった出玉性能を3分の2にまで落とした新規格機「6号機」も、まさにこの閣僚会議によって決定された依存対策の一つである。その他にも「本人・家族申告によるアクセス制限の導入推進」や「業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置」などが、パチンコ業界が取り組む依存対策として定められており、業界では今後、これら方針に則って粛々とその実施が進められてゆくこととなる。

ただし、我が国のギャンブル等依存対策の強化策は、ここで謳われた施策のみに留まるわけではない。今月施行されたギャンブル等依存症対策基本法に基づき、政府は来年度にも内閣官房長官をトップとして「ギャンブル等依存症対策推進本部」を設立する。

この組織は、内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、警察庁その他の関係行政機関の総合調整を行い、我が国のギャンブル等依存症対策に関する基本計画の策定を行なう役割を負っている。当該本部の下には「関係者会議」と呼称される諮問機関が設けられ、ギャンブル等依存に関して知見を持つ医療や福祉関係者はもとより、依存者やその家族の代表者などが委員として加わることとされている。ギャンブル等依存症対策推進本部は、この諮問委員会の意見を聴取しながら依存対策の基本計画を定めてゆくこととなる。

また、この基本計画は3年ごとに更新されるものとされており、今後さらに世論が高まるようなことがあれば、現在、各業界が実施を約束しているものよりもさらに強化された依存対策が各業界に求められる展開も、十分に予想される。

各業界におけるこれまでの依存対策は、世論の高まりを受けるたびに受動的に自主規制で対策を講じるのが常であった。だが今後は、より能動的に取り組まなければ、すぐに政府施策として規制強化が進められてしまうという状況になってきた。各産業にとっては厳しい環境ではあるが、これが本来の「あるべき」ギャンブル等業界の形だ。今以上に社会との関係性を重視しながら、持続可能な産業のあり方を模索してゆくことが必要となる。


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