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2019年01月15日
No.10000978

原則屋内禁煙で求められるホールの対応
多層階フロア分煙にひそむ落とし穴

原則屋内禁煙で求められるホールの対応

施設内での喫煙を規制する改正健康増進法が2020年4月から全面施行される。ホール企業も対策が迫られている。多くの人が利用する商業施設は、原則屋内禁煙が義務付けられるほか、違反者には罰則も科せられる。ではパチンコホールではどのような対策が必要か。喫煙に関わるルールを説明する(2019年1月7日現在)。


2018年7月に成立した「健康増進法の一部を改正する法律」、いわゆる受動喫煙対策法は、①望まない受動喫煙をなくす ②受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者などに特に配慮 ③施設の類型・場所ごとに対策を実施するというもの。これまで努力義務だった受動喫煙対策を施設の類型ごとにルールを設定して義務化した。

これによると、大型飲食店やホテルのロビー、コンベンションホールなどは原則屋内禁煙。ただし、煙が外に漏れない喫煙専用室の設置が可能だ。

設置できる喫煙専用室の基準は、部屋の入り口から中に向かって毎秒0.2メートル以上の速度で空気が流れ、煙が外に漏れない仕組みが必要だ。食事やカラオケなどができる加熱式たばこの喫煙室(経過措置)も上記と同じ基準となっている。

一定条件を満たす飲食店では、経過措置として一部例外が認められた。条件は、既存店で客席面積が100平方メートル以下、個人経営か資本金5000万円以下の中小企業が営むの2つを満たす場合である。該当店舗は、店頭に「喫煙」などを表示すれば喫煙可となる。

昨年12月11日、受動喫煙対策をめぐり開かれた厚生労働省の専門委員会では新たに、階数が複数ある店舗ではフロア分煙を容認する方針を決めた。これは煙が基本的に上に向かうためで、禁煙フロアより上階にあるフロア全体を「喫煙室」とみなすものだ。ただし、受動喫煙を防げないと考えられる吹き抜け構造では認められない。

喫煙フロアでは、20歳未満の客や従業員の立ち入りが禁じられるほか、喫煙できるのは厚労省が想定する加熱式たばこのみと定められた。紙巻きたばこを吸う際は、階別分煙であっても喫煙フロアに喫煙専用室を設けなくてはならない。


求められるホールの対応とは?

パチンコホールの扱いは、原則屋内禁煙で喫煙専用室の設置が可。灰皿などの喫煙器具の設置が禁じられる。なお、他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでない加熱式たばこに限っては、当分の間の措置として、加熱式たばこ用の喫煙室(遊技や飲食が可)を設置できるとされた。

改正法施行後は、都道府県などの指導や勧告、命令に従わない違反者に罰則を適用。禁煙場所で喫煙した個人に30万円以下、禁煙場所に灰皿などの喫煙器具や設備を設けるなどした施設管理者に50万円以下の過料を科す。パチンコホールの場合は、遊技フロアで喫煙者を見つけた場合に、当該人に喫煙の中止または遊技フロアからの退出を求める努力義務が課せられることになる。


具体的に考えられる多層階ホールでの受動喫煙対策を、ケース別に考えてみる。ケースAは、原則通り各階の遊技フロアを全席禁煙とし、各フロアに喫煙専用室を設置した場合。遊技フロアでは加熱式たばこを含めて一切喫煙できないが、喫煙専用室内では紙巻きたばこも加熱式たばこも吸うことができる。

一方、喫煙専用室を設置しない、あるいは建物の構造上、設けられないケースBを考えてみよう。ここでは階別分煙を採用し、1階を禁煙のパチンコフロア、2階を禁煙のパチスロフロア、3階を喫煙パチンコフロア、4階を喫煙パチスロフロアとした。喫煙フロアといっても、3階と4階フロアの各遊技席で喫煙できるのは加熱式たばこのみ。喫煙専用室がないため、屋内では紙巻きたばこを吸うことはできない。なお、このフロア分煙も当分の間の措置だ。

階別分煙を採用する上で注意点がある。それは、①喫煙フロアは禁煙フロアより上の階でなくてはならない ②喫煙できる場所では20歳未満の客や従業員の立ち入りが禁じられる ③喫煙フロアには、施設等の管理権原者による標識の提示が必要の3点だ。特に②のルールでは、喫煙フロアに20歳未満の従業員の立ち入りが制限されるため採用段階から見直す必要が出てきそうだ。

階別分煙は、機種レイアウトも悩みの種だ。例えばケースBのような場合、1階のパチンココーナーと3階の喫煙可能なパチンココーナーに、それぞれバランスのとれた機種構成を考えなくてはならない。また、4円パチンコと低貸しも同フロアに混在させていくことのデメリットも考えなくてはならない。どちらかのフロアにしかない遊技機や遊技料金を極力なくさなくては稼働ロスを生み出すか、喫煙したいのに禁煙コーナーでの遊技を強いるといった、ユーザー負担につながってしまうからだ。これは、これまでフロア分煙を実施してきたホールが抱えてきた悩みでもある。

いずれにしても施行までに時間がない。アミューズメントジャパンが行った喫煙ブース販売会社への取材では、「施工業者に限りがあるため早く対応しないと施行期限までにブース設置が難しくなる可能性がある」とのこと。たばことの親和性が高い業界だけに、迅速な対応が求めれている。

【詳しくは1/20発行の月刊アミューズメントジャパン2月号に掲載】


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