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2019年05月24日
No.10001201

ここで差がつくホールの空気環境
遊技ファンを受動喫煙から守る

ここで差がつくホールの空気環境

2020年4月からホールの空気環境が大きく変わる。すべてのファンが快適に遊技するために、屋内全面禁煙となるホールは何をすべきなのか。改正健康増進法のポイントと施行後の注意点をまとめた。


2020年4月1日から全面施行される改正健康増進法は、望まない受動喫煙を防ぐための法律だ。学校や病院、行政機関など一部の特定施設は禁煙(敷地内禁煙)に、多数の者が利用するそれ以外の施設は原則屋内禁煙になる。パチンコホールは後者の分類だ。

原則屋内禁煙といっても、後述する一定の基準をクリアした喫煙専用室であれば、設置が可能だ。喫煙専用室はもっぱら喫煙するためだけの空間であるため、この中で遊技を提供することはできないが、「遊技の合間に一服したい」という喫煙プレイヤーや、「禁煙にしてほしい」という非喫煙プレイヤーの願いを同時に叶える、必須設備の一つだ。

同法は18年7月に成立、公布された。以降に新規出店したホールの中には、全面施行に先駆けて遊技フロアを禁煙とし、喫煙室を設置した店舗があった。しかしその数は一部にとどまり、現時点においても完全分煙スタイルの店舗数は少数派だ。その大きな理由の一つは、喫煙専用室の基準が19年2月下旬まで不透明だったことにある。

その基準とは、①喫煙専用室の出入り口において、室内に流入する風量が毎秒0.2メートル以上あること、②たばこの煙が喫煙専用室の室外に漏れないように、喫煙専用室を壁、天井などで区画すること、③喫煙専用室で発生したたばこの煙を屋外に排気すること──の3点。ただし③については、管理権原者の責めに帰することができない事由、例えば賃借物件であるため屋外排気工事ができないなどの場合に、以下の性能をもつ脱煙機能付き喫煙ブースを設置することで、屋内に排気することが認められた。

その性能とは、総揮発性有機化合物の除去率が95%以上であること、喫煙専用室外に排気される空気における浮遊粉じん量が0.015㎎/㎥以下であること。これらが明らかになったことで、今後は完全分煙スタイルのホールが徐々に増えていくと見られる。



20歳未満の者には特別な配慮が必要

これまでは喫煙専用室の基準というハード面ばかりが注目されていたが、運用が始まればソフト面への注意が必要だ。その一つに20歳未満の者への対応が挙げられる。

改正法の趣旨は受動喫煙防止の強化。健康への被害が大きい20歳未満の者や患者は、厚い保護の対象とされている。このことから受動喫煙が生じうる喫煙専用室に20歳未満の者を立ち入らせることが禁止されている。これは遊技客、従業員の両方に当てはまるため、彼らが立ち入らないようにしたり、シフトの組み方を工夫したりする必要性が生じる。

二つ目の注意点は、喫煙に供する器具や設備の取り扱いだ。具体的には灰皿やスモークテーブル(分煙機)のことを指し、これらが喫煙専用室以外の場所で利用できる状態にあってはならない。容易に撤去できない場合は覆いを掛けるなど、利用できない状態にする対応が必要になる。

最後は標識の掲示だ。施設の出入り口の見やすいところには喫煙専用室の有無が分かる標識、喫煙専用室の出入り口の見やすいところには喫煙専用室である旨と20歳未満の者の立ち入りが禁止されている旨を表す標識をそれぞれ掲示しなくてはならない。

なお、標識掲示に違反が認められた場合や、喫煙専用室の基準不足に対する知事の是正勧告に従わない場合には、管理権原者が最大50万円の過料に処される。また、喫煙専用室以外の屋内で喫煙した者にも最大30万円の過料が処される。従業員のためにバックヤードにも喫煙専用室を設置するのか、禁煙を推奨するか、企業によって判断が分かれそうだ。



加熱式専用ホールは不可

一般的に消費されるたばこは、燃焼させる従来の紙巻きたばこと、近年普及が進む加熱式たばこに大別される。よく似たものに電子たばこがあるが、電気加熱した液体の蒸気を吸引する電子たばこは、たばこ葉が使用されていないため、日本国内では「たばこ製品」として販売されていないものだ。

厚生労働大臣は加熱式たばこのうち、たばこから発生する煙(蒸気を含む)が他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでないたばこを「指定たばこ」と指定する。指定たばこだけを喫煙できる「指定たばこ専用喫煙室」では、遊技や飲食サービスなどと同時に提供できる。

しかしここまでを鵜呑みにして、フロア全体を指定たばこの喫煙が可能な「指定たばこ専用ホール」とする考えは早計だ。厚生労働省健康局長が地方自治体の首長に発した文書には、「指定たばこ専用喫煙室は(屋内の)一部に設置できる」という点から、「全部を指定たばこ専用喫煙室にすることは認められない」と明記している。また、客席とバックヤードといった分け方で、どちらかを指定たばこ専用喫煙室、禁煙エリアとすることも不可だ。

なお、一見すると指定たばこは、受動喫煙による健康被害の度合いが極めて低いように感じられるが、指定たばこ専用喫煙室の設置基準は、紙巻きたばこの喫煙専用室と同様の扱いとなっている。


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