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2020年05月08日
No.10001709

【コラム】 夢と志 第4回
センターピンを狙っていますか!?
ブロードキャピタル・パートナーズ CEO 起業家インキュベーター 折口雅博

おりぐち・まさひろ 1961年6月11日生まれ。防衛大学卒業後に日商岩井に入社。ジュリアナ東京や六本木のヴェルファーレなど伝説的なディスコをプロデュース。95年に設立したグッドウィルグループをわずか12年で年商7700億円に成長させる。2004年に経団連の理事に就任。紺綬褒章、厚労大臣賞、日本赤十字社社長賞など受賞。その後も「プロの経営者」として、数多くの事業を成功に導く。座右の銘は「夢と志」

私は、これまでに多くのビジネスを手がけてきました。7700億円ほどの年商があったグッドウィルグループだけでなく、ディスコや飲食など規模や業種・業態は様々です。共通しているのは、どのビジネスでも成功させるために抑えるべきポイントがある、ということです。

つまり、そのビジネスの本質を突くということです。飲食店であれば、立地や価格、お店の意匠や雰囲気、従業員のサービスレベルなど、集客のために必要な要素は様々ありますが、本質は「味」です。低価格を売りにしているお店もありますが、あくまで「リーズナブル」を売りにしているだけで、その価格に応じた「味」を提供しなくては、繁盛店になることは不可能です。

「戦略」の間違いを「戦術」で修正できないのと同じように、枝葉の部分にいくら力を入れても、本質をつかんでいなければ成功することはできないのです。

ボウリングにたとえれば、ストライクを取るためにはセンターピン、つまり一番手前にある真ん中のピンを外してはいけない。センターピンに当ててこそ、ストライクが取れるのです。私はこれを「センターピン理論」と呼んでいます。

私が若い頃に手がけたディスコ「ジュリアナ東京」を例に説明してみましょう。実は、ジュリアナ東京をオープンさせた頃、すでにディスコブームは終わりかけていました。そんな時、私は会社員でありながら、資金を自分でかき集めて、数千万円の借金を背負ってオープンさせたのです。私の中では、こうすれば絶対に成功する、ライバルのディスコにも勝てるという見込みがありました。それは、ディスコ経営のセンターピンを見抜いているという確信があったからです。

当時、ディスコの集客に重要だと言われていたことは、「音楽のセンスが良い」、「お酒や食事が美味しい」、「芸能人や業界人が集まる」、「内装が素晴らしい」といったこと。ですが、私から見るとこれらは枝葉の要素に見えました。

いい音楽を求めるならば、コンサートやライブハウスに行った方がいい。良いお酒も、食事も一流のバーやレストランはたくさんあります。

では、私は何をセンターピンと捉えたか。それは「常に満員であること」です。ですから、こだわったのは常に人を絶やさないことでした。週末は満員だが、月曜や火曜はガラガラでも仕方ない。それまでのディスコ関係者は「それが当たり前」だと考えていたのです。

ですが、ディスコの中核的なベネフィットは賑わいの中で楽しく騒げることです。お祭りは大勢の人があふれていて初めて盛り上がります。楽しく騒げるのであれば、曜日は関係なく人は来るのです。

賑わいが賑わいを呼ぶ。閑散感が閑散感を呼ぶ。エンターテインメント業を営む読者の方なら分かると思います。私はまず、人を呼び込むことに注力しました。月曜日にはディスコは空いているのが常識でしたから、月曜日限定の招待状もまきました。

来ている人の多くは招待券で来ているのですが、中に入ってしまえば、カードで来ているかどうかなど誰にも分からない。「無料客ばかりでは収益が上がらない」という批判もありましたが、それは短絡的な話です。

ジュリアナに行けばいつも満杯だという評判が広がり、来た人が楽しい思いをして帰れば、それが噂で広がり、人が人を呼びます。実際、招待券で来た人のリピート率は50%に達しました。

過去の成功や固定概念にとらわれては、センターピンを見極めることはできません。また、「こうあるべき」という思い込みも危険です。物事の本質を突き詰めることで、必ず結果は出てくるのです。

ただし、人間は固定概念にとらわれやすいのも事実。次回は、どうしたら物事の本質を見極めることができるかを説明したいと思います。


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