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2020年05月11日
No.10001714

【コラム】 夢と志 第5回
過去の慣習や成功体験にとらわれない
ブロードキャピタル・パートナーズ CEO 起業家インキュベーター 折口雅博

過去の慣習や成功体験にとらわれない
おりぐち・まさひろ 1961年6月11日生まれ。防衛大学卒業後に日商岩井に入社。ジュリアナ東京や六本木のヴェルファーレなど伝説的なディスコをプロデュース。95年に設立したグッドウィルグループをわずか12年で年商7700億円に成長させる。2004年に経団連の理事に就任。紺綬褒章、厚労大臣賞、日本赤十字社社長賞など受賞。その後も「プロの経営者」として、数多くの事業を成功に導く。座右の銘は「夢と志」

前回はビジネスに成功するための「センターピン理論」についてお話しました。センターピンを見極めるためには、物事の本質を突き詰めなくてはなりません。過去の成功や固定概念にとらわれてはセンターピンを見抜くことはできません。また、「こうあるべき」という思い込みも危険です。

まず大切なのは普段から当事者意識で物事を眺めるようにすること。私は昔から、お店に行っても自分だったらどこを改善するかを考えます。レストランに入っても経営者の気持ちになって食べる。すると味やサービスの細かいところに気づくんです。人を批評、批判する立場ではなく、常に自分が批判、批評される立場になって考えるのです。

もうひとつは、固定概念や業界の常識にとらわれないようにすることが重要です。その慣習や常識が本質的なことかどうか、顧客が望んでいることなのかを疑うことです。例えば、日本の高級すし店ではコーヒーを出しません。老舗としてのこだわりかもしれませんが、客としたらコーヒーを飲みたい時もあります。コーヒーを出さない理由が、単に昔から出していなかっただけなのか、店の格が落ちるからなのか、それとも客のニーズに気づかなかっただけなのかを突き詰めて考えるべきで、多くは、昔からの慣習だからという理由がほとんどなのです。こうした細部の気づきを広げていけば、既存のサービスの在り方を見直すきっかけにもなるはずです。 

グッドウィルグループが介護ビジネスに参入した時、私は介護サービスのセンターピンを「居心地の良さ」と定義しました。

当時、介護サービス事業に参入するならば医療機関が強いだろうと言われていました。仮に医療機関と競争して勝てるのか。私は十分勝てると思っていました。なぜなら医療のセンターピンは「技術力」です。多少、ホスピタリティが低くても、病気を治してくれる医者に行くはずです。どんなに綺麗で居心地がよく、対応がよかったとしても、病気が治らない、あるいは技術上の評判が良くない病院には行きたくない。

介護も技術は大切ですが、もっと大切なのはマインドです。おむつを交換するスピードが早く、正確なヘルパーさんよりも、その人が来たら明るくなれる、楽しくなれるヘルパーさんの方がうれしい。思いやりがとても大切なのだと思ったのです。

良いマインドを持ったヘルパーさんを増やすためには、その人のまわりに良い雰囲気の人々がいること。それには良い社風が必要です。良い社風を作るためには企業の理念をしっかりと浸透させること。もちろん、待遇や評価もきちんと公正に行うことは大前提です。

また、当時は私がディスコで成功した派手なイメージを持たれていたので、介護ビジネスに参入するとき、様々な批判を受けました。介護は派手なビジネスをしてきた者にはそぐわない。地味なビジネスをしてきた人がやるものだ、といった声も聞こえてきました。そうした批判からは「高齢者は地味に暮らすものだ」「高齢者は弱者である」という固定概念のようなものが感じられたのです。

でも、果たしてそうでしょうか。ケアサービスも明るく楽しくできるのであれば、そうしてもいいはずです。介護を明るいものにできれば、高齢者の生活そのものも明るくなるはずです。

つまり、医療機関には勝てないとか、介護は暗いモノだということは「思い込み」「固定概念」で、それにとらわれていては、新しい価値は創造できないのです。

皆さんの業界でも、本当は不要なのに続けていること、あるいはニーズがあるのに、過去の常識にとらわれてそのニーズに応えられていないことがあるかもしれません、そうしたことについて、一度深く考えてみてもいいのではないでしょうか。


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