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2020年05月12日
No.10001720

【コラム】 夢と志 第6回
トップが最優先で考えるべきは「人事」
ブロードキャピタル・パートナーズ CEO 起業家インキュベーター 折口雅博

トップが最優先で考えるべきは「人事」
おりぐち・まさひろ 1961年6月11日生まれ。防衛大学卒業後に日商岩井に入社。ジュリアナ東京や六本木のヴェルファーレなど伝説的なディスコをプロデュース。95年に設立したグッドウィルグループをわずか12年で年商7700億円に成長させる。2004年に経団連の理事に就任。紺綬褒章、厚労大臣賞、日本赤十字社社長賞など受賞。その後も「プロの経営者」として、数多くの事業を成功に導く。座右の銘は「夢と志」

私がよく質問されることの一つが、「経営者として何を最も大切にしてきましたか」という問いです。その答えは「人をいかに活かすか」を考えることです。

グッドウィルやコムスンで私は設立後すぐに会長になり、社長は別の人間に任せていました。世の中のためになる会社になるためには、自分がいなくなったらダメになる、という会社にしてしまっては、本当の意味で社会の役に立つことはできないと考えていたからです。

これは、経営者以外にも言えることです。部長や課長、店舗型ビジネスであれば店長たちは、一定の権限と裁量を持っていますし、その部署やその店のキーマンであることは間違いありません。

ただし「自分がいないとこの仕事は回らない」となってしまってはダメなのです。優秀な店長とは、自分がいなくなったとしても仕事が回るような仕組みや人材育成ができる人なのです。

私自身もそうしてきました。人材の活用、成長を考えること、すなわち人事を考えることにこそ、経営者は最も時間を使うべきだと思ってきたのです。そして、その延長として、人事評価制度などのシステムも重要なのです。

適切な評価をして、配置異動をするだけで、それまでなかなか成果をあげられなかった人が、3倍くらいの成果をあげたりすることもあります。できる人にほど大きな仕事を任せ、評価していくべきです。そうすると加速的に成長していきます。

どんな人を評価すべきか、昇進させるべきか。これは会社、経営者によって変わるかもしれません。私は様々あるなかで、特に3つの要素を重視していました。それは「能力」「情熱」「考え方(価値観)」です。ただし、この3つは足し算ではなく掛け算で見るべきです。言い換えれば、このうちの2つが素晴らしくても、ひとつでもゼロだと全く評価しない、ということです。

「能力」は職歴や学歴、試験などを参考にすれば、採用前にある程度、わかります。「情熱」については、やる気があるかどうか、と言い換えることができます。物事を斜めに見ている、ネガティブである、という人は能力があってもダメです。

3つ目の「考え方」だけは、面接やテストで見抜くのは難しい。半年くらいは一緒に働いてみないとわからないケースもあります。

自分が認められるために人の足を引っ張ったり、上司なのに部下に責任を押し付けたり、ネガティブな発言ばかりしたり…という人は「考え方」に問題があるのです。

問題があるにもかかわらず採用してしまった場合は、その人にとっての適材適所を考えます。「考え方」は、多くの場合は直らないのです。

例えば、人に自分の考えを押し付けたり、威張ってばかりいたり、上から目線でばかり話す人がいたとします。謙虚さを持てない人は問題ですが、この場合はその人を審査部に置いてみるのです。審査部長に物わかりのいい人を置くと、売掛金のチェックが甘くなり、営業担当に緊張感がなくなることがあります。こういう役割ならば、「威張るのが好き」という考え方の人も、組織に緊張感を生む、という点ではプラスに働くこともあるでしょう。

もちろん、「考え方」の優れた人を採用するのがベストですが、見抜くことが難しく、また人材不足の昨今では、リスクヘッジとして「強みを生かす」ということを考えるべきです。

そもそも、経営では強みを活かしあうことが最も効率がよいのです。弱点を直そうとすると、労力の割に仕事をするうえでの武器にはならない。であれば、できることを褒めていく、長所を最大限に伸ばすべきなのです。

人をどう活かすか、どういった役回りをさせるのか。こうしたことを考えるのも、経営者の役割なのです。


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