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2020年05月13日
No.10001724

【コラム】 夢と志 第7回
人のまねをさせることで成長スピードは上がる
ブロードキャピタル・パートナーズ CEO 起業家インキュベーター 折口雅博

人のまねをさせることで成長スピードは上がる
おりぐち・まさひろ 1961年6月11日生まれ。防衛大学卒業後に日商岩井に入社。ジュリアナ東京や六本木のヴェルファーレなど伝説的なディスコをプロデュース。95年に設立したグッドウィルグループをわずか12年で年商7700億円に成長させる。2004年に経団連の理事に就任。紺綬褒章、厚労大臣賞、日本赤十字社社長賞など受賞。その後も「プロの経営者」として、数多くの事業を成功に導く。座右の銘は「夢と志」

私は企業経営のなかで「スピード」を重視してきました。グッドウィルでは、創業4年5カ月という当時の最短記録で株式も公開しました。売上や拠点という規模拡大のスピードも速かった。経営というのは、様々な課題を乗り越えながら進んでいかなくてはなりません。ちょうど下りのエスカレーターに逆らって駆け上がるようなものです。

ですから、勢いやスピードが必要なのです。これでよい、と成長をあきらめたら終わりです。「10億円の売上で、1億円の利益が残ればいい」。こう思ったとたんに売上は8億円、7億円になり、利益は1000万円の赤字になっていくでしょう。

さて、成長するために最も重要なのは人材です。人がいなければ、いくら資金があっても成長は望めません。現在の人手不足という状況は、多くの企業の経営課題になっているかもしれません。

でも、社内を見まわしてみてください。今いる人材を活かしているでしょうか。なかには、窓際族のようにインターネットでニュースを見たり、仕事に集中していなかったりと、役割を果たしていない人たちがきっといるはずです。

それは、その人たちが悪いのではありません。役割を与えていない会社、上司の責任です。彼らの持つ強みを活かせる仕事を与えていないのです。

彼らとしてもサボっているのが面白いわけではありません。本当はもっと仕事がしたい、会社や人の役に立ちたいと思っているはずです。きっと新入社員のころは目を輝かせていたでしょう。ところが、途中からクサってしまった。そうなる前に、経営者や上司は何らかの強みを見つけて、活かすことを考えるべきだったのです。

人の育て方にも方法があります。なかなか結果の出せない社員をどう戦力化していけばいいのか。私の場合は、うまくやっている人の真似をしてみることを徹底させていました。

オリジナリティが大切。個性は十人十色。人がやらないことをやりなさい。入社式でこのような訓辞をする経営者もいます。たしかに、間違ってはいません。ですが、ある程度のレベルに達するまでは、その分野でうまくいっている人のまねをさせた方が絶対に伸びます。

これは、会社という組織に属する価値です。企業には様々な分野で活躍している人がいる。そのまねをすれば、成長スピードを速めることができます。さらに各自の成功体験、失敗体験も大量です。それが、「組織の経験値」となっているのです。

ただし、それをデータベースにして共有したり、意見を交換したりしないと意味はありません。それができていれば、組織は大きな力を発揮できます。

お客様から好かれる接客をしている人は、なぜ好かれるのか。その要素を分解して共有する。営業成績が良い人のまねをする。そうすることで一定のレベルまでは早いスピードで到達します。それから各人の個性やユニークさを出していくことで、さらに全体のレベルが上がっていくのです。

もちろん、人にはそれぞれのタイプ、キャラクターがありますから、自分と全く違う対応の人をまねしても難しい。そこは、自分が誰のまねをすればいいのかを見極めることが必要でしょう。

それも社員任せにするのではなく、会社側のマネジメント、上司の指導が必要です。誰のまねをするのがいいのか。誰をロールモデルとするべきなのかを示してあげるべきです。それによって社員の成長を早めることができます。

人手不足だからといって、新しい人を採用することばかりに目を向けずに、今いる人材の「強み」を活かすことを、本気で考えてみてください。

ただし、人材も企業も成長するためには理念の浸透が欠かせません。そうすることで、スピードを上げてもぶれない組織ができるのです。このことを忘れないでください。


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