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2020年07月08日
No.10001823

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
オンラインカジノ事業者の日本営業強化
[コラム]カジノ研究者の視点

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

ここ数カ月、日本に対する海外オンラインカジノ勢の攻勢が凄い。当然ながら日本国内から海外のオンラインカジノにアクセスして賭博を行うことは違法にあたるわけだが、一方でそれを実質的に押しとどめる術が今の日本にはないのが実情。かつて、オンラインカジノ利用者に対する摘発が行われた事例も数件あるが、ここ数年で摘発されているのは繁華街等で店舗を設けて海外のオンラインカジノにアクセスをさせる「インターネットカジノ店」と呼ばれる特殊な業態のみである。本流となっている、客自身が保有するPCやスマホからアクセスをさせて賭博を行わせるオンラインカジノ事業者およびその利用者の摘発は行われていないのが実態だ。

この様に一種の野放し状態となっているのをいいことに、海外を拠点とするオンラインカジノ事業者は日本への営業行為を強化している。伝統的なオンラインカジノの営業行為は、日本語のwebサイトを作成し、そこに客を誘導する形で行われてきたが、近年ではマーケティング行為がSNSに広がっている。YouTubeのパチンコ動画宜しく、日本語でオンラインカジノを楽しむ動画を配信し、その戦績をツイッターなどで広める。動画もかつての匿名配信から顔出しへと移行しつつあり、さらには大勢のパチンコ・パチスロ愛好者を抱える有名ライターなどを広告塔として引き込もうとする事例も相次いでいる。

そして何よりもオンラインカジノ業者にとって好機だったのが今回のコロナ禍だ。国民に対する外出自粛の要請が行われ、パチンコ事業者が協力休業を実施する中、オンラインカジノ事業者は普段と変わらぬ営業で日本国内に居住するギャンブル愛好家たちにサービスを提供し続けてきた。私が個人的に定点観察をし続けているYouTubeチャンネルも、このコロナ禍を通じて確実にアクセス数が伸びている。国や自治体からの要請を守り、マジメに協力休業を選択した遊技業界が、違法な営業者に客を奪われるという非常に理不尽な状況だ。

このような現状に対し、警察は「証拠固めが難しい」などと泣き言を言わず、2016年に行ったのと同様に改めて積極的にオンラインカジノの摘発強化に乗り出すべきだ。そして何よりも、国はオンラインカジノに対する規制を厳格化して行く必要がある。違法オンラインカジノへのアクセス遮断や、それらサイトに客を誘導する「リーチサイト」と呼ばれるwebサイトへの規制など、諸外国でも実施されている様々な対策導入が日本では未だ遅々として進んでいない。「正直者がバカを見る」ことが当たり前に放置されれば、徐々に社会秩序は守られなくなる。そうならないためにも、国や警察には強くその対応を求めたい。


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