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2021年08月26日
No.10002400

これから起こる「人手不足」にどう備える? 
米国では大手ファストフードは賃金10%UP

「ワクチン接種が進み、早期に経済活動が正常化してほしい──」。誰しもそう願っているはずだ。しかしそれが現実になったとき、必ずしも良いことばかりではない。間違いなく、対人サービス業では深刻な人手不足とそれに伴う賃金上昇が起こる。

小売りや外食、レジャーなどのサービス業の現場からは多くの従業員が去った。休業手当の周知が進まなかったことや、事業者が従業員を解雇、雇止めした結果、2020年度の完全失業者数は36万人増え198万人に膨らんだ。年度平均の完全失業率は2・9%と前年度比0・6ポイント上昇。完全失業率の悪化は、リーマン・ショック後の2009年度以来11年ぶりだった。

観光関連産業や外食産業、非食品の小売業などと比べれば、パチンコホールはほぼ通常営業を継続したといえる。そのパチンコホールにとって、この雇用環境は採用面ではプラスに働いた。働く場を失った人たちにとってパチンコホールは、新型コロナ禍の影響が軽微で、かつ時給が高い魅力的な仕事だ。実際、「有料の求人媒体に広告を出さなくても、自社サイトを見て応募してくる人がいた」というホールが多かったはずだ。だが、この状況は数月後には様変わりするはずだ。

ワクチン接種進んだ米国
人手不足懸念5月から


米国の雇用統計を見ると、6月の非農業部門雇用者は主としてレジャー・ホスピタリティ、公私立教育、専門職・ビジネスサービス、小売業、その他のサービスで需要が発生し、4月、5月の増加数を上回った。パンデミック前の2020年2月時点と比較すると、6月時点の非農業部門雇用者数は95・6%にまで回復した。雇用者数が100%に回復しないのは、求人があるのに人々が職場に戻ってこないためだ。



実は、米国ではワクチン接種完了者の人口比が30%台になった5月の時点ですでに、一部産業から労働者不足の懸念が顕在化し始めていた。ファストフードや小売業の仕事に再び就こうとする人が少なく、人手を確保したい企業がじわじわと賃金を上げた。そして米マクドナルドは同月、直営店で働く3万6500人以上の時間給従業員の賃金を平均10%引き上げると発表した。



6月の統計によると、米国のレジャー&ホスピタリティー産業における管理職を除く従業員の平均時給は、5月には前月より0・17ドル上昇、6月には同0・37ドル(2・3%)上昇して16・21ドルになった。これは前年同月比では11・2%の上昇だ。

また、大卒ではない労働者の留保賃金(求職者が就職するか職探しを継続するかの折り合いがつく賃金水準の指標)は、すでに3月時点で前年同月比で26%も上昇していた。これはあくまで平均値ではあるが、企業は昨年3月時点より26%高い給与を提示しないと従業員を採用できない状況が起こっていることを示している。

敬遠されるサービス業
採用を有利にする備えが必要


働き手が戻ってこない理由として挙げられることが多かったのが、「手厚い失業保険のためその受給資格期間いっぱいまで失業状態を選んでいる人が多いため」というもの。だが、どうやらこれは主要因ではないようだ。

7月8日の米フォーブスが掲載した記事「労働者は何を求めているのか?人手不足は本当は何を示唆しているのか?」は、2021年6月17日にBTIGが発表したレポートの「調査対象者のうち、前職よりも失業手当の方が多くのお金を得ている人は14%しかいない。」という結果を挙げ、「失業手当の増額が現在の労働者不足の主な理由ではないことを強く示唆している」と指摘している。

この2カ月前の5月7日のザ・ワシントン・ポストは「単なる人手不足ではなく、アメリカでの仕事のあり方が見直されているのだ」と題した記事で人々の仕事に対する意識の変化を指摘している。アメリカで実施された複数の調査から、多くの人々が「パンデミック以前とは異なる人生を送りたい」と考えていることが明らかになっている。どこで働くのか、どんな働き方をするのかを考え直しているというのだ。

Pewリサーチセンターが今年実施した調査によると、失業者の66%が仕事の分野を変えることを「真剣に検討した」と答えている。以前はレストランや旅行会社で働いていた人たちが、倉庫や不動産業などに移っている。あるいは、再びパンデミックが起こっても雇用が安定していて、自身が危険なウイルスにさらされる可能性の低い仕事を求めている。

日本でも人材難が起こる
ホール企業はどう備える?


同様のことが日本で起こることは間違いない。国内のワクチン接種が進んでいくことと、秋の行楽シーズンに繰り越し需要(使わなかった娯楽費が蓄積されている)の表面化が起こることを踏まえ、観光やレジャー産業で一気に大量採用が起こる。それに続いて、年末商戦を控えている小売業で大量採用が起こる。

レジャー、外食、小売りなど接客サービス職が敬遠されればその産業は人手不足となり、人材の争奪戦が起こる。大手企業は従業員の正社員化や福利厚生の充実を推し進め、少しでも求職者に選ばれる職場づくりをするだろう。

遊技業界は現在、人材採用において有利な状況にある。しかしこれから他産業が採用を活発化し、かつ募集賃金や待遇を引き上げるため、ホール企業の優位性は下がり、かつての採用難に戻ることは想像に難くない。少しでも採用を有利にするための備えが必要だ。


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