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2025年01月08日
No.10004700

平成観光が女性特化型研修|自分自身と向き合った6カ月

平成観光が女性特化型研修|自分自身と向き合った6カ月
研修の最後に屋号のKEIZにちなんだ「オッケイズポーズ」で記念撮影

東海エリアを中心に全国でホール19店舗を展開する平成観光(本社:岐阜県多治見市)。昨年発表した中期経営計画に基づく今後の人材採用なども見据えて人材育成を図る体制を整えている同社は今年、未来を担う女性社員の育成を目的に「女性特化研修」を実施した。6カ月にわたって行われた研修を修了した女性社員の心の中には、これからのキャリアに向けた意識改革が起こっていた。
※月刊アミューズメントジャパン2024年12月号に掲載した記事を転載しました。

平成観光にはこれまで人材教育を担う専門部署はなかったが、昨年10月に研修や教育を通年で計画・実施する人材開発課を人事部内に立ち上げた。一方で同社は2011年に「女性管理職育成プロジェクト」、通称「女プロ」を立ち上げて、女性を対象とした研修などを行ってきた。社歴22年の総務課係長、河地匡子さんはこれまでの経緯を知る一人だ。

「女性が働きやすい環境を整えることと、女性管理職を増やすことを目的にやってきた女プロですが、今回の研修は女性社員一人ひとりが自分のキャリアを考える研修を目指しました」

河地さんとともに今回の研修を主導した大坪綾夏さんは、新卒で入社して13年目。営業部で主任まで務めて人材開発課に異動してきた。同社の職位は、社員、班長、副主任と上がっていき、副主任になると管理職という位置づけになる。大坪さんはこんな思いを持っていた。

「若手女性社員にとって、私たち主任の女性はもう30代後半。新卒の女性が役職を目指そうと思っても、遠すぎるモデルケースでしかありません。女性社員が上を目指す意欲を持っていても女性役職者が少ないとキャリアアップのイメージが描けないことが課題でした」

こうした背景から女性特化型研修を会社に提案。外部講師として女性リーダー研修などで同社をよく知るSPARKS NETWORKの中村恵美代表を講師として招き、研修が始まった。

研修は今年5月から10月までほぼ毎月開催。20人の参加者が5人ほどのグループに分かれて課題に向き合い、それぞれの考えを発表していった。

実は河地さんは、事前に取った参加者アンケートを見てこんな不安を抱いていた。

「昇格に意欲的でない意見がたくさんあったので、楽しみな反面、研修に対するモチベーションが半年続くのか心配な面もありました」

だが、蓋を開けてみるとその心配は杞憂だった。

私もこうなりたいと思った

北海道の『KEIZ手稲店』に務める坂井章華さんは入社5年目の33歳。手稲店は他店舗の社員と交流する機会も少ない。スタッフはみんな仲が良い反面、とても仕事ができる班長がいたため、自分に役職は無理だろうという思いもあった。しかし、今回の女性研修を受けて坂井さんのマインドは大きく変わった。

「休憩時間に初めてお話した社員さんが、私のように人前で話したり、言葉で気持ちを伝えるのが苦手と言ってたんですが、みなさんの前でそれを告白した上で、一生懸命班長を目指していますと発表しているのに驚き、私もこうなりたいと思いました」

それからは、あれもやってみたい、これもやってみたいという思いがどんどん湧いてきた。手稲店に戻ると研修内容を実践し、アルバイトスタッフに研修内容を伝えるようになった。一緒に研修を受けていた手稲店の仲間から「一緒に班長を目指そう」と言われて、坂井さんは班長を目指すことを心に決めた。

研修を終えると「男性社員やアルバイトさんも興味を持っていた研修だったので、このまま終わるのは残念」という思いが強くなっていた。

坂井さんの背中を押したのは、同じ手稲店に勤務する高橋七星さん。高橋さんも坂井さん同様、研修前のアンケートで「役職を目指そうとは思わない」と回答していた。ところが1回目の研修で目の色が変わった。

「そこでリフレーミングという考え方を学び、気持ちの面で弱いところがあった私にそれが刺さりました。その後の研修も普段の仕事で実践できる内容だったので、仕事に対するモチベーションも上がりました」

研修を重ねる中で、役職を目指そうか迷っている時期があったが、同じグループの中にいた役職者から「班長だからって、パーフェクトではなくてもいいんだよ」という言葉をかけられて気持ちに変化が生まれた。坂井さんに「一緒に班長を」と声をかけたのはこんな理由からだった。

「2人で班長になった時の手稲店はどうなるんだろうと。それがイメージできたので、迷っているんだったら2人で目指さない?目指した方がいいんじゃないかな、と話しました」

今後は「どういうお店にしたいのかという上司の思いを、自分たちがアルバイトや後輩の社員に伝えられるような役職者を目指したい」と前を向く。

グループに分かれてディスカッション。店舗運営職16人(うち管理職2人)と総合職3人(うち管理職2人)、店舗事務員1人の計20人が参加した

心に響いた上司の言葉

本社の宣伝企画課に務める山内淑恵さんは、女プロのメンバーとしてこの研修の準備にあたってきた一人だ。ただ、研修が進むにつれて苦しい思いを抱き始めていた。

「社歴が長い自分にこの研修内容は当てはまっていないのではないかと思い、すごく苦しかったんです」

その様子は上司も敏感に感じ取っていた。山内さんは研修の最後に提出するキャリアプランシートを書くにあたって上司に打ち明けた。

「私ダメなんです。3年後、5年後の自分の未来が見えないんです」

すると上司は「誰ひとり見捨てたりしないし、チーム一丸となって会社に貢献していける部署にしたい。同じ船に乗って、同じ方向を向いていければ大丈夫」と励ましてくれた。山内さんはこの言葉に救われた思いがした。

「この女性研修のテーマのひとつに、自分のキャリアプランを早めに考えた方がいいという目的があったのですが、私も手遅れではないという気づきを得ることができました。苦しい時期もありましたが、この研修を受けさせてもらえて本当に良かったと思います」

受講者を前向きな気持ちにさせた今回の女性特化型研修。研修期間中に参加者の中から役職者も生まれた。研修を主導した大坪さんはいま、こんな思いを抱いている。

「今回は種をまいただけ。今後はこの種を大きく育てていきたいと思っています」

文=アミューズメントジャパン編集部


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