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2021年11月19日
No.10002530

INTERVIEW Daichi Tatsumi/辰巳大地 氏
元MBSカジノディーラーがスクール設立
カジノ業界への人材輩出目指す

元MBSカジノディーラーがスクール設立
たつみ だいち/美容師、歌舞伎町ホストを経て2017年3月にカジノディーラーとしてシンガポールの統合型リゾート(IR)「Marina Bay Sands」に入社。2021年3月に同社を退社し日本でD2internationalを設立。

日本で統合型リゾートの整備区域認定プロセスが進む中、カジノ関連ビジネスを立ち上げるため辰巳大地氏は、大型IRカジノのスーパーバイザー職を辞して帰国した。辰巳氏が計画しているのは日本人を対象にした国内外でのカジノスクール事業だ。 取材・文=田中剛(本誌)


──お久しぶりです。辰巳さんには約7カ月前、マリーナベイ・サンズ在職中にClubhouseでお話を伺いましたが、その時にはまだ事業プランは非公開でした。セブ島での「語学留学×ディーラースクール」のお話の前に、改めて経歴をお教えください。
辰巳 あのときはYouTube番組『令和の虎』への出演が決まっていて、そこで事業プランを公表することになっていたので、お話できないこともあったのです(笑)。経歴ですが、私は2017年3月にラスベガス・サンズ社が運営するシンガポールの統合型リゾート『マリーナベイ・サンズ』(以下、MBS)に入社し、始めの2年間はカジノディーラーとして、3年目からはスーパーバイザーとしてディーラーの指導などをしていました。起業するために今年3月に退社し帰国しました。

──日本でカジノスクールに入学したのが2014年ですが、カジノディーラーを目指すことになったきっかけは?
辰巳 クロムハーツ、シュプリームなどアメリカのブランドが好きで、海外で買い付けてECサイトで販売したいと考えていたんです。海外のことを調べていると、カジノについての情報がちょくちょく目に入ってきて、なんとなく興味が出てきたんです。さらに情報を探すと、家からタクシーで1000円の距離に日本カジノスクールという学校があることがわかりました。体験入学に行き、日本人でも海外のカジノで働けると知り衝撃を受け、その場で入学を決めました。

──当時はIR推進法も成立していない段階で、日本にカジノが開業するかどうかも分からない状況でした。当初から海外のカジノで働くことを考えていたのですか?    
辰巳 アメリカへの憧れがありましたから、それはあったと思います。日本カジノスクールで6カ月間ディーリングを学んだ後、ワーキングホリデー・ビザでカジノで働けるカナダに行くことを考え英語学校に入って英語を文法から勉強し直しました。その後、英会話力を高めるためにセブ島に語学留学しました。語学留学から戻ってカナダに行く準備をしていた2016年12月にMBSの求人の話を受け、年明けに面接し3月からシンガポールで働くことになったのです。

カジノで必須の英語と
ディーリングを学ぶ

──そしてディーラースクールを設立するためにMBSを退社したのですね?
辰巳 MBSではいろんな国から来た同僚が働いていましたし、業界内ではさまざまなバックグラウンドを持った日本人とも出会い、ネットワークができました。そういった人との出会いが後押しとなり、『令和の虎』でプレゼンしたディーラースクール事業を起こすことになりました。日本にいてもカジノディーリングの基礎を学ぶことはできますが、日本にIRが開業するまでの間、本物のカジノで経験を積もうと思ったら英語が必須です。ですから、しっかり英語を学びながらカジノディーラーとしてのスキルも学べる環境を提供するために、『International Casino Academy』をフィリピンのセブ島に開校することにしました。業界歴が長いプロフェッショナルがディーリングの講師を務めますので、最新の業界水準で学んでいただきます。3カ月という短期間で海外のカジノで働ける水準にまで教育します。もっと学びたいという方はさらに3カ月間の追加受講も可能です。

MBS勤務時代はまとまった休暇をとっては、ポーカーをしに海外に出かけていた
──いまディーラースクールを卒業しても、そのスキルを維持する場は、日本にはアミューズメント施設しかありません。そのために、カジノで働くことに関心がありながらもためらう人もいると思います。
辰巳 ですから、『International Casino Academy』は、コース修了後に海外のカジノで働くことを支援します。我々にはカジノ業界でのネットワークがありますので、アジア圏を中心としたいろいろなカジノに採用枠を設けてもらったり推薦したりといったルートを確保する計画で、その準備はすでに始めています。年が明けた1月にはセブ島の物件を決めて6月に開校できるよう進めます。フィリピンのゲーミング規制機関PAGCORからのライセンス取得や同国のTESDA(専門的教育と技術の向上機関)認証の取得など、日本では進められないことがいろいろあります。


──国内ではプロデューサーとしてポーカーバー、アミューズメントカジノの開業を手掛けていますね。
辰巳 帰国した時点ではまったく考えていなかったことなのですが、東京ではポーカー人気の高まりを背景に、アミューズメントのポーカールーム(風適5号営業)やポーカーバー(5号営業+特定遊興飲食店営業+深夜酒類提供飲食店営業)の需要があります。その開業をお手伝いした第1号が11月1日に開業したポーカーバー『Queen's Town Roppongi』です。ポーカーテーブル2台のほか、バーカウンターとボックス席があります。このボックス席部分には、必要に応じてポーカーテーブルを1台増設できます。アルコールは1000円、ソフトドリンクは500円という一律料金です。

──辰巳さんはポーカーディーラーではなくカジノディーラーでしたね。事業者から見るとポーカーとカジノゲームは似て非なるものですね。
辰巳 カジノゲームとポーカーは収益の構造が異なります。BJやバカラなどのカジノゲームはプレイヤー対カジノという構図で、カジノ側にはハウスエッジという確率上の優位性があり、これが収益源です。これに対して、テキサスホールデミなどのポーカーはプレイヤー対プレイヤーのゲームです。カジノは、戦っているプレイヤーのベットから成る賞金プール(ポット)からコミッション(約5%の手数料)を取ります。これが収益になります。そして、私が働いていたシンガポールでは、『リゾート・ワールド・セントーサ(RWS)』にはポーカーテーブルがありましたが、MBSにはありませんでした。

──ご自身のポーカー歴についてお教えください。
辰巳 ポーカーを遊び始めたのは日本カジノスクールに入った後なので2014年だと思います。初めて海外のカジノでポーカーをしたのは2015年で、シンガポールのRWSでした。その後もちょくちょく海外に行きました。マカオではポーカー仲間とルームシェアしながら2カ月くらいキャッシュゲームの日々を過ごしたこともあります。シンガポールで働き始めてからは、まとまった休暇にはほとんど海外に出かけてポーカーをしていました。2018年には「APT Macau Championships #1 HK$3,300 NLH Welcome Event」で優勝した経験もあります。いまポーカー選手の世界的なデータベース「Hendon MOB」を確認しましたが、ここに登録されている私のAll Time Money List(生涯獲得賞金)は1万7千ドルとのことです(笑)。

辰巳氏がプロデュースしたポーカーバー『Queen's Town Roppongi』(港区六本木)は11月1日にオープン


ディーラースクール
新宿にも開校予定

──カジノゲームとポーカーはゲームの構造、収益の得かたが異なるわけですが、この違いはアミューズメントの世界においても影響しますか?
辰巳 アミューズメントカジノ、アミューズメントポーカールーム、アミューズメントポーカーバーはそれぞれ異なる業態だと理解しておく必要があります。そして、ポーカールームとポーカーバーでも異なります。『Queen's Town Roppongi』のようなポーカーバーのビジネスは、あくまでもポーカーは来店動機であり収益の源泉はバー(特定遊興飲食店営業+深夜酒類提供飲食店営業)の部分です。この立地でトーナメント(1人だけが勝ち残るゲーム方式)の参加費(税込み6000円+サービス料10%)中心で店舗運営を成り立たせるのはなかなか難しいと理解していますので、少ないテーブル台数で高めのトーナメント費、アルコール中心に計画しています。サービス料も入れた客単価はトーナメントに参加する方で8800円、リングゲームだけで遊ばれる方で2~3000円でしょう。六本木という飲食店の多い街で朝まで営業していますから、ポーカー好きな方のみならず、キャバ嬢さんとの同伴前やアフターの場として立ち寄ってリングゲームを遊びながらアルコールを楽しんでいただけるでしょう。

──いま開業準備を進めている『Tiger Casino TOKYO』について教えてください。こちらはアミューズメントカジノですね?
辰巳 『令和の虎』に出演した後、大学受験予備校「武田塾」を全国に100店舗以上展開されている株式会社A.verの林尚弘社長が、「まず国内で何か一緒に事業を始めよう」と声を掛けてくださったのです。そして林社長ご自身が新宿に『Tiger Casino TOKYO』を開業することになり、私がそのお手伝いをさせていただくことになりました。ここはルーレットやバカラ、BJなどのカジノゲーム種目も置くいわゆるアミューズメントカジノです。それらゲーム以外の部分に付加価値を付けるための林社長のアイデアが、いろいろと盛り込まれています。そして夕方までの時間帯は、手軽に低価格で基礎を学べるディーラースクール『International Casino Academy Japan』として使います。開校は2022年上旬の予定です。

──そういったお店のプロデュースは今後も計画があるのですか?
辰巳 あまり積極的に引き受ける考えはありません。『International Casino Academy』の立ち上げ準備もありますし、そもそも日本の若者がカジノ産業に挑戦するサポートをしたいのです。そして彼ら彼女らが、将来日本に開業するIRに即戦力人材として戻ってきて、日本のカジノを盛り上げてくれることを願っています。


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