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2022年03月31日
No.10002732

特集 新規則時代の営業戦略④ 財務・出店
変化に対応した財務戦略と出店戦略を
M&Aは中小ホールが「買い手」プレイヤーに

ひらの・たかし 2004年船井総合研究所中途入社。パチンコ、建設、不動産などの事業再生を中心に再生支援実績は50件を超す。M&Aでは法的手続など中規模以上のアドバイザリー業務から小規模の事業整理まで幅広く対応。経営戦略、ファイナンス、M&Aなどの成長支援に取り組む。一般社団法人日本ターンアラウンドマネジメント協会準会員、事業再生士補。パチンコ歴30年。

コロナ禍によって政府は大きな財政支出を強いられた。それは反面、企業の過剰債務が増加したことの表れでもある。その流れを受けた2022年、ホール企業の資金調達と出店戦略はどうしていくべきなのか
文=平野 孝 船井総合研究所 ライン統括本部 M&A支援室シニアコンサルタント

2020年3月より始まった新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響は、2022年1月現在、オミクロン株による第6波を迎えることとなった。ワクチンのブースター接種や経口薬の登場など局面の違いはあるが、第6波を含むコロナ禍の行方が中小企業の景況感を左右することは間違いないだろう。

また、円安による消費物価上昇も懸念されるなど、コロナ禍3年目となる22年の社会経済の行方を予測することは難しい。プラスに転じるか、マイナスに転じるか、維持なのか。ポストコロナの見通しを含めて社会経済における大きな分岐点となる気配がある。

21年12月の銀行と信用金庫における法人及び個人向け融資の残高が、2000年以降過去最高の水準となったとの報道があった。このうち都市銀行などでは業績が堅調な大企業を中心に借り入れを返済する動きが進んだことから残高は減少を見せたが、中小企業向けの貸し出しが多い地方銀行では、新型コロナの影響が続く飲食業や宿泊業などサービス業を中心に、高水準の残高が続いている。また、低金利による住宅ローンの貸し出しも増え、全体を押し上げる結果となった。

さらに、全国銀行協会が新型コロナ禍で影響を受けた中小企業の経営を支援する新指針をまとめることがわかった。中小企業の経営再建において、大企業よりも債務の返済期間を長くするなどの、次の3つの骨子を中心に、中小企業の融資に対する新たな指針「事業再生ガイドライン」を策定中で、近日中に正式に取りまとめることとなった。

中小企業の事業再生を柱とした全国銀行協会の新指針

① 私的整理手続の条件緩和
● 債務超過解消期間を5年以内に延長
● 経営責任ではトップの引責を必ずしも求めない
② 外部専門家の活用
● 再生支援協議会などによる再建計画策定とモニタリング
③ 有事対応
● 返済猶予や減免など柔軟に対応

これらの動きは、長期化した新型コロナ禍の中小企業及び地方銀行への影響が22年に顕在化するのを予測した動きと推察するが、特に、地方銀行における中小企業向け(再生)支援の動きと融資に与える影響に注視したい。

ホール企業における資金調達と事業再生

既述の金融環境をもとに、ホール企業における資金調達と事業再生について触れてみたい。まず、資金調達について、相談すべき相手はメインバンクであることに間違いはなく、メインバンクとの関係強化に注力すべき年であると言える。また、メインバンクとのリレーションシップ強化に向けて、次の取り組みを進める必要があると考える。

メインバンクとの関係強化に向けた取り組み

① 財務資料の適時開示
● 経理担当者による月次試算表の開示(状況によっては資金繰り予実を含む)
● 借入残高推移の開示(他行及びオーナー借入金等を含む)
② 経営トップによる定期業績報告
● 経営トップによる半期ごとの業績報告(支店長あて)
● 経営トップによる中期経営計画報告(進捗と今後の計画)
③ 不稼働資産の売却又は賃貸
● 赤字店舗の閉鎖·売却又は賃貸。閉鎖店舗の売却又は賃貸

金融機関とのリレーションシップ強化における重要な点として、「継続的な取り組み」が挙げられる。例えば、業績報告であれば、報告時期や提出資料、経営トップの訪問時期などをルーティーン化することである。

また、閉鎖店舗などの売却または賃貸の定期的な動きを報告し続けることは金融機関に安心感を与える。なお、簿価の高い不動産の売却では売却損が発生する場合やバランスシート上の純資産の減少が発生することがあるが、他方、換価による事業資金や返済資金の確保につながることから合理的な取り組みとして評価されるケースが多い。また、これらの継続的な取り組みを続けている間は、融資においても門前払いにはならないであろう。本年においては、リレーションシップ強化に向けた継続的な取り組みを実践してほしいと思う。

パチンコ業界は融資を受けにくい!?

なお、「パチンコ業界は融資を受けにくい」といった趣旨の話を聞くことがあるが、逆に申せば、「どの業界なら融資を受けやすいのか?」と訊ねたいところである。

既述のとおり、新型コロナ禍による中小企業への影響が待ったなしの状況下で、業界カテゴリーによる優劣や一般論は特段意味がない。しかし「業界内の優劣」が重要なポイントとなる。業界内の優劣、すなわち、同じ業界において、新型コロナ禍で業績好調な企業とそうでない企業の差が鮮明となりつつあるのは、業界を問わず全業種に共通した傾向となる。

パチンコホールと他業種の最大の違いとして、中小企業支援協議会(支援協)による再生スキーム(支援協スキーム)を使うことができない点である(パチンコホールは支援協の支援対象業種とならない)。

私的整理の一つとなる支援協スキームとは、支援協が関与することで債権者調整(協調)を図りながら再建計画をまとめるものだ。債権者合意後の再建計画は、合理的な再建計画として債務免除等における免除益課税や債権者における貸倒の損益計上などの再生税制の優遇を受けることができる。だが一方で支援協に代わり債権者調整を図ることができる弁護士、会計士、コンサル会社等の専門家を用意する必要がある。詳細は割愛するが、22年は事業再生案件の増加が見込まれることから、メインバンク等の動向に注視すべき年となる。

2022年は中小ホールのM&Aが本格化

2015年前後から本格化したパチンコホールのM&Aは、その後、中堅大手ホールを中心に事業拡大戦略として定着したが、2022年は店舗数3店舗未満の中小ホールにおいてM&Aが本格化する年と思われる。

2022年1月末の経過措置終了の半年前ごろから売却または賃貸の案件が急増したが、概ね500台未満の店舗が主流となった。

他方、中堅大手ホールは依然として800台前後の規模を求める傾向が強く、需要と供給のミスマッチが顕著となっている。これら、売手と買手のミスマッチにおいて、その隙間を縫って中規模店舗取得に積極的なのが地域に根差した地元企業である。

地域や商圏におけるシェアアップを目的としたM&Aであるが、売買価格の低下やM&A情報の取得のしやすさなどが寄与し、2022年におけるM&Aの動向として注目したい。

※『月刊アミューズメントジャパン』2022年4月号に掲載した記事を転載しました。


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