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2022年04月01日
No.10002733

特集 新規則時代の営業戦略⑤ パチンコ動向
常識から脱却し、新たな営業手法の確立を
「溢れ客」の受け皿づくりが必須に

常識から脱却し、新たな営業手法の確立を
いしの・あきら ㈱矢野経済研究所で会員向け情報誌「パチンコパチスロ新機種情報」の編集業務に携わり、パチンコを中心とした機種分析を本格的に開始。以降、アンケート調査業務や遊技機メーカーへの開発支援業務などを通じ、業界に様々な意見を進言している。

新規則機になって業績が好調なパチンコだが、若年層比率が高まり、機種戦略でも過去の常識が通用しなくなってきた。過去の「勝ち筋」とは変わっていることを認識し、時代に適応した機種戦略が必要になってくる。新時代の「勝ち筋」とは?
文=石野 晃 パチンコアナリスト

2月に現行規則機への入替えが終わりました。パチンコはハイミドル市場となり、売上・粗利などの指標はそれほど落ち込まず、むしろハイミドルが好調なホールでは業績を伸ばしたところも散見されました。

ハイミドルが活発なだけに、パチンコは新台が数多く導入されたイメージがあるかもしれませんが、実はそれほどの台数は売れていません。前回の遊技規則改正時やマックスタイプ撤去時と比較すると、新機種を積極的に投入するのではなく、以前設置していた現行規則機、いわゆる旧台や中古機を少台数ずつ再設置し、旧規則機の撤去に対応しているホールも少なくありませんでした。

これは長引く遊技参加人口の減少や稼働の低迷により、各ホールで新機種の購入意欲が低下していることに加え、世界的な半導体不足でメーカー側が新機種を満足に供給できていないことも一因になっています。

特に後者の新機種供給不足は、ホール営業にマイナスの影響を及ぼしています。実際、昨年の年末商戦期においても『エヴァンゲリオン』を筆頭とした話題機種が登場して高稼働を記録しましたが、供給不足から未導入のホールも多く、業界全体で見た場合には盛り上がりにいま一つ欠けるものでした。

かつてであれば、販売台数約10万台に匹敵する大型タイトルが大規模店で1ボックス以上、中小規模店でも半島以上導入され、ホール全体で商戦期への気運を高めるという構図がありました。しかし新型コロナウイルス感染拡大を受けた社会情勢の変化により、これまでのホールで”当たり前“とされていたこの構図が崩れ始めていることがうかがえます。

半導体不足が解消される見通しは未だ立っておらず、恐らくこの新機種の供給不足は2022年以降も続いていくでしょう。

このように考えると、これからは、人気の高い特定の機種を大量導入してファンへの集客と還元を行い、その他の機種で粗利を確保していくという、これまでの営業手法が通用しづらくなっていきます。そのため、ホールにおいてもニューノーマルへの対応が求められるようになっていくでしょう。

固定島を
いかに増やしていくか


そのひとつの策が、自店において主軸や準主軸と呼べる人気機種を育成し、そのラインナップを充実させることです。旧規則機から現行規則機への移行期であったここ数年は、「真・北斗無双(初代)」「花の慶次・漆黒」「沖海4」「大海4」の4大タイトルが主軸となり、ホールの営業を支えていましたが、1タイトルでの大量供給が難しい22年以降は、この4大タイトルにとどまらず、ファンを集客して稼働や粗利に貢献するタイトルを増やしていかなければなりません。

そのためには、人気の高い特定の数機種をボックス単位で大量導入し、その他の機種をバラエティ設置するという従来の機種構成から脱却し、1島程度の設置で安定的な稼働や粗利を生み出す機種のタイトル数を増やしていく必要があります。

幸いにもパチンコの場合、現行規則になってから『P Re:ゼロから始める異世界生活 鬼がかりver.』をはじめ、スマッシュヒットとなった機種は複数ありますし、「ルパン」「エヴァ」「牙狼」「源さん」など、過去に高実績を残し、ファンに定着している人気シリーズが複数存在しています。

また、バラエティ内で少台数設置された機種の中でも、固定客を獲得し、中長期的な稼働に貢献したタイトルが常に登場してきました。

つまり、新たなヒット機種へと化ける可能性を秘めたシリーズ機やタイトルは充実しており、これらの新作が一般的な新機種とは異なる初動を示した際には、定期的な増台を行いながらコーナーを形成し、自店の主軸機や準主軸機へと育成していくことが望まれます。


「機会(機械)ロス」を
最小限に


話題機種や大型タイトルでも販売台数が5万台に達していないここ最近の状況を考慮すると、ヒット機を導入したとしても、台数不足から全てのファンを受け入れることができず、目当ての新機種を遊技したくても満席で遊技できない“溢れ客”が以前よりも増える可能性が高くなっています。

22年の営業では、この“溢れ客”をいかに取りこぼさないかも重要です。このような“溢れ客”はホール内で他の機種を遊技しながら、目当ての機種の空き台を待つという行動に出るはずです。

これまでのように、話題機種以外の“他の機種”で極端な回収が行われた場合、“溢れ客”は早々に見切りをつけ、目当ての機種を遊技することなく、ホールを後にしてしまいます。つまり、やっとの思いで話題機種を導入しても旧規則機時代と同様の新台効果が発揮されず、結果、期待していた程の客数や売上の増加に至らない局面が増えていくことが想定されるのです。 

この様な事態を避けるためには、“溢れ客”が遊技することを見越して、話題機種と親和性の高い機種を近くに設置し、目当ての台が空くまで彼らが粘れる運用を行っていかなければなりません。

特に21年以降は、減少したパチスロの粗利をパチンコで補うべく、極端な回収を行ない、満足に遊べない台が目立っていました。この様な台に遭遇した場合、恐らくファンはホールそのものへの不信感を覚えるはずです。「安心して遊べる店」という印象をファンに与える意味でも、現段階における稼働と粗利のバランスを見直していった方が良いでしょう。

オミクロン株の急速な感染拡大に伴い、経済が再び停滞し、パチンコ産業においても苦しい環境の中で新たな時代に突入することになりました。ただ、環境の変化は着実に進行しており、2022年においても、これまでの常識にとらわれない、新たな対応が求められます。

※『月刊アミューズメントジャパン』2022年4月号に掲載した記事を転載しました。


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