特集記事

特集記事内を

NEW
2022年06月22日
No.10002880

企業力を向上させるソリューション②
なぜ若手社員が育たないのか?
行動変容を促すには「関係性づくり」を起点にする

SPARKS NETWORKの中村恵美代表(左)と第二営業部の堀川和映顧問

「若手社員がなかなか育たない」と感じている人事担当者、店舗責任者は少なくないはずだ。選考ではコミュニケーション能力が高そうな学生を採用したはずなのに、現場で働き始めた新入社員のコミュニケーション能力をもの足りなく感じるのはなぜか。その原因は組織にありそうだ。

若手が育たないという悩み

VUCA(ブーカ)時代と言われるようになって久しい。これまでの常識が通用しないだけでなく、変化が速く、かつどのような変化が起こっていくのかを予測することが難しい時代だ。かつての〈正解がある時代〉には組織の在り方は「速く・安く・ミスなく」遂行できることが重要だった。〈正解がない時代〉に突入した現代は、想定外に変わりゆく状況を素早く察知し適応するために、組織は「チームとして模索・挑戦し、小さな失敗から素早く学び改善していく」ことが必要だ。必要な人材像は、かつての「言われたことをきちんとこなせる」から、「何が正しいかを行動しながら模索する」へと変化した。

「しかしホール企業の幹部の方々から聞こえてくるのは、『主体性がない』『コミュニケーションが苦手』『リーダーシップが発揮できない』という、若手社員の育成についての悩みです」とSPARKS NETWORKの中村恵美代表は言う。

中村代表は、多くの企業で研修を行う中で若手の言い分を聞く機会も多い。

「主任・班長たちの言葉に耳を傾けると、彼ら彼女らが感じているのは、端的に言えば、『組織体制やリーダーシップが古い』、『職場内に自分の意見を言いにくい雰囲気がある』、『自分の未来に希望が持てない』ということなのです。ですから私は、組織の在り方とやり方を見直さなければならないと考えています」

若手社員は
なぜ育たないのか?


第二営業部の堀川和映顧問は、多くのホール企業の研修じたいを見直す必要があると指摘する。堀川顧問が懸念しているのは、企業内の研修企画担当者が抽象度の高いプログラムを避け、具体性の強いプログラムに偏る傾向が強まったということ。すなわち事後にテストで点数化しやすい知識系のプログラムへの偏りだ。

「新型コロナ禍で研修がオンラインに移行したことが拍車をかけた面もあるかと思いますが、研修を企画する際に、いかに成果に繋がるかではなく、受講者の満足度や分かりやすさに視点を置いたり、人事考課に使いやすいという理由で選ぶことも具体性が強いプログラムに偏る理由でしょう。抽象度の高い研修、すなわちプレゼンテーション、ファシリテーション、傾聴スキル、コミュニケーションなどはオンラインで実施しにくい上に、研修後の効果測定が難しい。しかし研修には『教養』を高める役割だけでなく、実務の中で成果を出してもらうための『行動変容』を起こす役割があります。知識を増やすだけでは成果に繋がらないため、成果の出る行動をとらせることで『自分にもできる』という自信を与え、それがモチベーションアップに繋がるという効果に着目すべきだと思います」

堀川顧問によると、ホール企業は中堅幹部の研修も計数管理など知識系に偏っている。その結果、店長や副店長クラスの中堅社員は、後輩や新入社員に仕事やノウハウを伝えることはできても、行動を変えるための技術を身につけていないことが多い。

「新卒採用時に『コミュニケーション能力の高い人材を採用したい』と言いながら、社員にはコミュニケーション研修を実施していない企業がほとんど。それでは新入社員も若手社員もなかなか育たない。企業が、『若手が働きやすい環境、やる気が高まる環境を整えよう』と考えるのは正しい判断だが、環境を『待遇』や『制度』と捉えるのは間違い。特に若手社員にとっては上司が環境そのもの。だからまず、店長を筆頭とする役職者のコミュニケーション能力を高めなければなりません」(堀川顧問)

有効な育成方法=
まずは関係性を変える



前出の中村代表も、「組織が望む結果を得たいなら、関係性の質を高めることから入れば成功の循環が持続する。直接的に結果(数字)づくりに走ると、失敗の循環にハマる」と説く。

成功の循環は、①対話や交流を通じて信頼が深まる(関係の質)ことで、②多様な視点から気づきが生まれる(思考の質)。すると、③自発的な行動が生まれ協業が進む(行動の質)。そして、④結果が良くなる(結果の質)。結果が良くなることで、さらに信頼関係が深まる(関係の質)という循環だ。しかし、結果を作ろうとして関係ができていない段階で結果の質を起点にしてしまうと、若手社員は「やらされ」の域を超えない。

堀川顧問も、「店長や研修企画担当者が、心理学やモチベーション管理といった分野を学んでいれば、ラポールづくりができた上で役割を与えゴールを設定するという順になるはず」と、関係性づくり(相手に対する誠実な関心)が起点だと言う。その重要性を知っている役職者は、若手社員の出した結果ではなく行動の質と量すなわち取り組みの過程を見守っているという安心感を提供し、日頃から相手の存在じたいを承認する言動をとる。それにより、若手社員が安心してチャレンジできる環境を作り出している。

鍵となるのは、「職場の心理的安全性」という概念だ。

「知らないことを知らないと言えない雰囲気、課題があると言えない雰囲気を作っている上司・店長の下では若手社員は活躍できない。まず、『無知の不安』『無能の不安』『邪魔の不安』『否定の不安』の4つの不安を払しょくしてほしい」と中村代表は言う。

だが、臆せずものが言える雰囲気というだけでは、ぬるま湯になりかねない。心理的安全性があると同時に、社員が組織の意義・目的を共有しその実現に貢献しようという使命感を持っていることが必要だ。

「この2つが高い組織はやる気に満ちた状態にある。ですから若手社員の育成には、組織全体に『心理的安全性を高める』と『使命感を高める』というふたつの軸でデザインされた研修が必要になるのです」(中村代表)


※『月刊アミューズメントジャパン』2022年6月号に掲載した記事を転載しました。


関連記事