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パチンコ店特化型広告代理店のCEOが語る 「実戦! パチンコ店のWebマーケティング」㉚
『AIキャラクター』を活用したWebマーケティングの未来
文=梶川弘徳 シー・エフ・ワイ代表取締役
近年、国内外の業種を問わず、AIキャラクターによるマーケティングが増加傾向にあります。まだまだ研究開発の段階という意見もありますが、接客サービスやSNS活用などで既に実用レベルとしてAIキャラクターがマーケティングに活用される事例も増えています。
パチンコ業界でも、「AI来店」や「AI店員」など、AIキャラクターを活用した集客施策を目にするケースが増えました。今回はAIキャラクターの活用事例や注意ポイント、AIキャラクターを活用したWebマーケティングの未来について解説します。
現在、パチンコ業界においてはAIキャラクターを活用した「AI来店」の需要が高くなっています。広告宣伝ガイドライン第2版が発出され、第三者による取材(来店)は規制違反に該当しないと解されたため、第三者招致を集客施策に利用するという流れが生まれました。一部のユーザーからは「実際に来店していない」「事実と異なる」といった声が挙がっていましたが、いまのところ禁止する要素もないため、AI来店の活用に関しては引き続き問題ないと判断されるでしょう。
また、「AI店員」としてAIキャラクターを集客施策に活用する事案に関しては、実際には「イメージキャラクター」としての位置付けの活用となるため、実際の「雇用者」と誤認するような表現をせず、キャラクターとして活用する分には「AI来店」と同様に問題ないと考えられます。
AIキャラクターは、「Stable Diffusion」や「Midjourney」などのサービス・ソフトウェアを利用して画像を生成します。「Stable Diffusion」は無料でインストールすることができて、機能も充実しているのでさまざまなAIキャラクターを生成することができます。初期設定には少し手間が掛かりますが、操作は難しくないので、慣れれば誰でも簡単に画像生成することができます。
一方で、生成AIは気が付かないうちに法律違反を犯す可能性もあるので注意が必要です。特にトラブルになりやすいのが「著作権侵害」。画像生成AIが流行し始めてから著作権を侵害する事案が急増しています。
誰でも簡単に画像生成することができる反面、認識不足による著作権侵害が増えているというのが要因でしょう。法律的にもルールがあいまいになっている部分も多いので、注意して活用する必要があります。
例えば、パチンコ遊技機の版権元のキャラクターを学習させて、メーカー提供素材には無いポーズを生成し、オリジナリティーのあるポスターを作成するという活用については、完全に著作権侵害となるので注意が必要です。
また、「ディープフェイク」についても日本で逮捕者が出るほど問題となっているので注意が必要です。ディープフェイクとは、AIで本人と見分けがつかない精巧な画像や動画を生成することを指します。元々は映画製作など、エンターテインメントの現場で作業効率化を目的に開発されたものです。しかし、あまりにリアルで高精細であることから悪用されるケースが増え、昨今ではフェイク(ニセ)画像や動画の代名詞になりつつあります。「遊び心」でディープフェイクを生成するようなことがないようにしていただきたいです。
最後に「AIキャラクターを活用したWebマーケティングの未来」という観点から、事例として「りんな」を取り上げたいと思います。
りんなとは、日本マイクロソフトが開発した会話ボットのひとつで、2015年7月31日にLINEのサービスに登場し、Twitterでユーザーと交流を図ったり、歌手として活動する、女子高生という設定のAIキャラクターです。「いま日本で最も共感力のあるAI」とも言われており、rinna株式会社のイメージキャラクターとして活動しています。
りんなは、LINEをメインプラットフォームとしており、10代20代の若い世代がメインユーザーとなっています(LINE友だち890万人、Xフォロワー10・8万人、YouTubeチャンネル登録者数1・27万人)。コミュニケーションを取ることができるAIキャラクターとして、「AIと人」だけではなく、「人と人」とのコミュニケーションをつなぐ存在を目指しているそうです。
現在パチンコ業界では、生成AI画像(静止画)をイメージキャラクターとして集客施策に活用するのが主流となっています。「AI演者」や「AI店員」がパチンコホールのメッセージをユーザーに伝えることが役割となっており、そのメッセージによってユーザーの期待感が高まるというのが現在のAIキャラクター活用の構図です。ここから、AIキャラクターに「動き」が出てきたり、声でメッセージを伝える「音声」が入ってきたりといったような「進化」が始まっていくものと思われます。
AIキャラクターを動画生成することや、音声をAIで生成すること自体はサービス・ソフトウェアで手軽にできてしまいますので、早いスピードで進化していくことでしょう。そして、「りんな」のようなコミュニケーションを取ることができるAIキャラクターをパチンコホールのイメージキャラクターとして活用する事例が出てくるのもそう遠くない未来かもしれません。
実際にCFYでは、動くAIキャラクターのプロモーション活用について開発を進めています。いずれにしても、ルールを守り、ユーザーにとって利便性が高まるようなAIキャラクターの活用を、パチンコ業界として目指していきたいものです。
※『月刊アミューズメントジャパン』2024年6月号に掲載した記事を転載しました。
文=アミューズメントジャパン編集部