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2025年10月27日
No.10005020

『積極進取』で6年連続20%成長|サミーデジタルセキュリティ

『積極進取』で6年連続20%成長|サミーデジタルセキュリティ

パチンコ・パチスロ遊技機のデバッグを主な事業とするサミーのグループ会社として、2015年に設立されたサミーデジタルセキュリティがいま、目覚ましい成長を遂げている。同社を支えているのはグループミッションである『積極進取』の精神。躍進の背景に迫った。

デバッグとはコンピュータープログラムに含まれる「バグ」と呼ばれるエラーや不具合を発見し、それを修正するプロセス全体を指す。ゲームがデジタル制御されているパチンコ・パチスロ遊技機でもデバッグは不可欠な作業だ。開発の最終段階で行われ、人が試作機に向き合って淡々とゲームを繰り返し、目視でバグを発見する、熟度が求められる作業だ。

外部委託のデバッグを内製化へ

2015年当時、サミーはこの作業を大手デバッグ企業に100%外部委託していた。当時本社があった池袋にあるサンシャイン60のワンフロアの半分をデバッグルームとして、派遣されてきた100人以上のスタッフが大規模にテストを行っていた。当然、デバッグにかかる経費は膨大になる。そこでサミーでは徐々にデバッグの内製化に取り組み、2015年にデバッグを主事業とするサミーデジタルセキュリティ(以下、SDS)を設立した。現在、SDSの代表取締役を務める佐藤社長は設立当時をこう振り返る。

「デバッグにおけるテストのノウハウが少しずつ蓄積されてきたので、サミーの文化である『積極進取』の精神でチャレンジしようと、内製化への布石を打ったのです」

佐藤社長

しばらくは委託企業を併用してデバッグを行っていたが、現在では100%内製化を遂げている。佐藤社長が代表取締役に就任した2019年以降は事業が軌道に乗り、昨期まで6年連続で20%成長。躍進の源はグループ外企業の顧客化と事業の多様化にあった。

社員数は300人を超えた

グループ外企業からの受注が増加

SDSが設立当初から課題としてきたのは、サミー以外の遊技機メーカーからデバッグ作業を受注することだった。しかし同業他社にとってサミーの名を冠した会社にデバッグを委託するのは情報管理の面でリスクがある。

一方でサミーは、遊技機業界におけるプラットフォーム戦略を打ち出していた。その一つが、メーカーの垣根を越えてパチスロの筐体を共同で使用する「ZEEG筐体」だ。サミーとユニバーサルエンターテインメント社が培ったノウハウを他メーカーにも享受してもらうことで、コストや性能面でウィンウィンの関係になる取り組み。それはデバッグ事業でも可能ではないか。

そこでSDSは大手デバッグ企業にはない独自の方針でこの課題に臨んだ。人財教育だ。デバッグを行う人財を、派遣やアルバイトではなく直接雇用してしっかりと教育する。パチンコ・パチスロの知識やデバッグに関する知識だけでなく、ソフトウェアテスト技術者資格認定の取得も推奨。現場の人財が一定のスキルを身に着けた段階でデバッグの業務にあたる教育システムを整えた。

「クライアント様が最も重視する情報管理や倫理、モラルの教育にも力を入れて、遊技機の知識を備えたデバッグのエキスパートを育成する仕組みづくりをしてきました」(第1サポート事業部の齋藤部長)

こうした取り組みやデバッグの品質が認められて、2021年からはサミー以外のメーカーから仕事を受注できるようになった。そのために東京・上野に「第1デジラボ」を開設。さらに取引メーカーが増えたため2024年には「第2デジラボ」も増設した。上野のラボを管理している第2サポート事業部の富田部長は、ラボのセキュリティ管理についてこう語る。

「どの部屋も完全に独立していて、入退室は厳重に権限を管理。部長であっても入室制限が設けられています」

同じく第2サポート事業部の千原次長は責任の重さをしっかりと受け止めている。

「社名にセキュリティという言葉が入っている会社ですから、間違いがあってはいけない。市場で発覚する不具合がなくなるように尽力し、メーカー様のお役に立ちたいと思っています」

SDSでは現在、遊技機以外のデバッグにも事業領域を拡大。セガサミーグループ内でのゲームのデバッグも受注している。第3サポート事業部の飯塚部長はこの領域を担当している。

「グループ内外のデジタルコンテンツやスマートフォンのアプリなどのデバッグを手がけています。面白いところでは玩具の製品テストもやっているんです」

東京・大崎の本社内にあるデバッグルーム

人財派遣業をもうひとつの事業の柱に

一方でこれから成長が見込める事業が人財派遣業だ。遊技機のデバッグ作業は開発の遅れなどがあると人溜まりが起きてしまう。その課題を解決して人財を有効活用する方法として人財派遣業の免許を取り、クライアント企業や協力会社などにテスターを派遣する事業をはじめた。すると予想以上に引き合いが多く、大きな事業に育ち始めた。

この流れを受けて現在では、デバッグとは職種が異なる一般事務や経理などバックオフィスの人財派遣まで手掛けるようになった。

「セガサミーグループで人財派遣業の免許を持っているのはSDSだけ。エンタメ企業で働きたい人財のニーズは高く、派遣登録者も増えています。今後はまず若年層や女性の方の活躍を推進しながら、主婦層や外国籍の方など、より幅広い層にも雇用の機会を広げていきたいと思っています」(派遣事業部の礒野さん)。

次々と新たな事業領域を開拓してきたSDS。次に目指すのは東京以外での事業展開だ。

「デバッグ事業で名古屋や大阪の遊技機メーカーにリーチしやすいような場所に拠点を作りたいと考えています。当面の目標はパチンコ・パチスロ業界のデバッグでナンバーワンになること。そのために社員も高いモチベーションで仕事をしてくれていますから」(佐藤社長)

写真左から飯塚部長、千原次長、齋藤部長、富田部長、礒野さん


サミーデジタルセキュリティ株式会社
https://www.digital-security.sammy.co.jp/

文=アミュースメントジャパン編集部
月刊アミューズメントジャパン2025年11月号に掲載した記事を転載しました。


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