特集記事

特集記事内を

NEW
2026年08月31日
No.10005375

人手不足でも「定年廃止」は3.9%|65歳以降の雇用と賃金の実態

人手不足でも「定年廃止」は3.9%|65歳以降の雇用と賃金の実態

人手不足が続く中、企業にとって「何歳まで働いてもらうか」だけでなく、「65歳以降の人材に何を任せるか」が人事戦略のテーマになっている。

厚生労働省が公表した2025年の「高年齢者雇用状況等報告」によると、常時雇用する労働者が21人以上の企業23万7739社のうち、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.9%だった。

実施方法は「継続雇用制度の導入」が65.1%で最も多く、「定年の引上げ」が31.0%、「定年制の廃止」が3.9%となった。「65歳以上定年」と「定年制の廃止」を合わせた企業割合は34.9%。70歳までの就業確保措置を実施している企業も34.8%まで上昇した。

企業には65歳までの雇用確保措置が義務付けられている。70歳までの就業機会確保は努力義務で、「70歳定年」が義務化されているわけではない。


60代前半の給与水準は55~59歳の約8割

高齢者雇用を考えるうえで、賃金水準も重要になる。厚生労働省の「高年齢者等職業安定対策基本方針」によると、2024年の一般労働者の所定内給与は、60~64歳が月31万7700円、65~69歳が27万5500円だった。

55~59歳の給与を100とした場合、60~64歳は81.0。2019年と比較すると3.7ポイント上昇している。定年後の賃金を「定年前の8割以上」としている企業は39.6%。2019年から15.1ポイント増えた。定年前の月給が40万円だった場合、8割なら32万円、7割なら28万円、6割なら24万円となる。

これは再雇用時の平均給与を示したものではない。比率を金額に置き換えた単純計算で、実際の賃金は企業、職種、仕事内容、勤務時間などによって異なる。定年後の給与を一律に大きく引き下げる制度だけでなく、仕事や役割に応じて処遇を見直す企業も出てきている。


65歳以降も役割に応じて処遇

厚生労働省は2024年、高齢者の人事・給与制度を見直した14社にヒアリングを行い、「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」として公表した。事例集では、高齢者のスキルに応じた処遇や、役職定年・定年制の見直しを検討する企業の参考になる取り組みが紹介されている。

大和ハウス工業では、従来は60歳になると管理職の賃金が約4割、一般職では2~3割下がっていた。制度見直しで60歳の役職定年を廃止し、60歳以降も同じ役割を担う場合には処遇を維持できる仕組みに改めた。

65歳以降の嘱託再雇用制度も見直している。従来は「週4日勤務・月20万円」の単一制度だったが、「週4日勤務・月22万円」と「週5日勤務・月最大35万円」の2コースに複線化した。厚労省の事例集では、この見直しによって「現役同等の働き方を可能とした」としている。

この金額は大和ハウス工業の制度であり、高齢者再雇用の一般的な賃金水準ではない。65歳以降も役割や働き方に応じて処遇を設計する企業の具体例として見る必要がある。同じ事例集では、オムロンが定年後再雇用者について役割や成果に基づいた処遇へ見直した事例、リコーが再雇用者についても仕事内容に基づいて処遇し、役職への就任を可能にした事例などが掲載されている。


ホールでも「何を任せるか」が課題に

異業種の制度を、そのままパチンコホールに当てはめることはできない。高齢者を「雇い続ける」ことだけでなく、65歳以降の人材にどのような仕事を任せるかという考え方には参考になる部分がある。

長年店舗で勤務してきた社員であれば、接客経験、顧客対応のノウハウ、店舗運営で培った判断力などを持っている。

現役時代と同じ勤務体系をそのまま続けてもらうことだけが選択肢ではない。若手スタッフの教育、接客面でのフォロー、店舗運営の支援など、経験を生かせる仕事へ役割を組み替える方法も考えられる。

管理職経験者であれば、店長職を離れた後も、複数店舗の教育や管理面を支援する役割を設ける余地がある。

これらは、公的統計でホールの高齢者活用事例として示されているものではない。厚労省が公表した他業種の事例を踏まえ、ホール企業に置き換えた場合の一例だ。

勤務日数、勤務時間、身体的負担も含めて設計する必要がある。高齢者雇用は、年齢だけでなく、本人の能力や経験、役割、働き方、賃金を組み合わせて考えるテーマになっている。

採用難への対応では、新卒、中途、アルバイトの採用人数に目が向きやすい。社内にいる経験者に何歳まで、どのような形で働いてもらうかも人材確保策の一つになる。

「定年を何歳にするか」だけではなく、「65歳以降に何を任せ、その役割にどのような処遇を設定するか」。高齢者雇用が広がる中、ホール企業にとっても、人事制度と現場の仕事をセットで見直すテーマになっている。


文=アミューズメントジャパン編集

【出典・参考資料】
・厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」
・厚生労働省「高年齢者等職業安定対策基本方針」
・厚生労働省「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」
・厚生労働省「高齢者の活躍に取り組む企業の事例集」
・内閣府「多様化する働き手に関する企業の意識調査」


パチンコ・パチスロ最新記事