
2026年10月01日
No.10005428
No.10005428
「検索される店」から「AIが理解できる店」へ|店舗情報はどう変わる
「近くで食事ができる店は?」「駅から近く、駐車場のある店を探して」。これまで店舗を探す際には、検索結果や地図に表示された候補を利用者自身が見比べることが一般的だった。生成AIが検索サービスに組み込まれたことで、この店探しの過程にも変化が起き始めている。
利用者が条件を文章で伝えれば、AIが複数の情報をもとに候補を整理して回答する。店舗ビジネスにとって、自店の情報は「人に見てもらうもの」だけではなく、AIが店舗を理解するための情報にもなりつつある。求められるのは、新たなAI対策を始めることだけではない。公式サイトやGoogle、SNSなどに分散して掲載してきた店舗情報を、企業としてどう管理するかという課題も浮かび上がる。
GoogleもAI回答にローカルビジネス情報を活用
Googleは2026年5月、Google検索の生成AI機能に対応するための公式ガイドを公開した。対象となるのは、検索結果に生成AIによる回答を表示する「AI Overviews」や「AI Mode」などだ。その中でGoogleは、生成AIによる回答には商品情報だけでなく、ローカルビジネスに関する情報が含まれる場合があると説明している。Googleビジネスプロフィールなどに登録した商品やサービスの情報も、AIを活用した検索体験の中で利用される可能性がある。
生成AI検索の登場によって、従来とはまったく異なる集客対策が必要になったわけではない。Googleは、生成AI検索についても従来からのSEOの基本が引き続き有効だとしている。AI検索への対応でも、出発点となるのは「自店について正確で十分な情報が公開されているか」という従来からの基本だ。
約44万件のAI回答を分析 約7割で店舗情報を参照
AIが店舗を探す際に参照する情報について、GMO TECHが2026年8月に日本語のGoogle AI Modeを対象としたローカル検索の調査結果を公表している。飲食店、病院、美容室など実店舗・施設を持つ21業種を対象に、約10万9500件の検索クエリについて5月から7月まで4回の観測を実施し、延べ約44万件のAI回答を調べた。
約7割の回答で、Google検索やGoogleマップ上に表示される店舗・施設情報と結び付く参照が確認された。AI回答に含まれる参照情報のうち、GMO TECHが「Google店舗カード」と定義する店舗・施設情報が占める割合も、5月の平均38.0%から7月には48.8%に上昇した。
この結果はGMO TECHによる独自調査であり、GoogleがAI Modeのランキング要因を公開したものではない。同社も、すべての検索クエリや回答に共通する挙動を保証するものではないとしている。「この情報を登録すればAIに選ばれる」といった攻略法として捉えることはできないものの、Google自身もAIを活用した検索でローカルビジネス情報が利用される可能性を説明している。店舗について公開している情報が、従来の検索だけでなくAIによる回答でも利用される環境になってきたことは押さえておく必要がある。
店舗情報は一つの媒体だけでつくられない
Googleが店舗について把握する情報は、事業者がビジネスプロフィールに登録した内容だけではない。Googleによると、公式Webサイトなどインターネット上で公開されている情報、第三者から提供されたデータ、利用者が投稿した住所や電話番号、写真、口コミなど、複数の情報源から店舗情報を収集している。
通常のローカル検索についてGoogleは、表示順位を主に「関連性」「距離」「知名度」の組み合わせで決めると説明している。ビジネス情報は充実し、正確であるほどローカル検索結果に表示される可能性が高くなるとして、住所、営業時間、業種、駐車場やWi-Fiなどの属性情報を詳しく入力するよう推奨している。口コミへの返信や写真・動画の掲載も案内している。
Googleビジネスプロフィールだけを更新すれば店舗情報の管理が完結するわけではない。公式サイトでは営業時間が10時から、Googleでは11時からとなっていたり、店舗サイトには駐車場の記載があるのに別の媒体には記載されていなかったりするケースも考えられる。店名や住所の表記が媒体によって異なる場合もある。こうした違いがAI検索への表示にどの程度影響するかは公表されていないが、Googleが複数の情報源から店舗情報を構成している以上、「どこで見ても正しい情報になっているか」という視点の重要性は増している。
「検索順位」から「店舗を説明できる情報」へ
これまで店舗のデジタル集客では、Google検索やGoogleマップで上位に表示されることが大きなテーマだった。この重要性は変わらないが、生成AI検索では利用者が必ずしも「地域名+業種」のような短いキーワードだけで検索するとは限らない。「駅から近くて夜まで営業している店」「駐車場があって家族で利用しやすい店」「初めてでも利用方法が分かりやすい店」といった複数の条件をまとめてAIに尋ねることができる。
店舗側に必要となる情報も、検索結果の順位だけでは捉えきれなくなる。営業時間、アクセス、設備、提供サービス、利用方法など、「その店がどのような店なのか」を判断できる情報を整理しておく必要がある。AIだけのために情報を書くという話ではなく、利用者に正確な店舗情報を提供するという従来からの取り組みの重要性が、AI検索の登場によって改めて浮かび上がっている。
店舗情報を誰が管理するのか
店舗情報の整備は、販促手法だけではなく企業としての情報管理にも関わる。店舗名、住所、営業時間、アクセス、駐車場、設備、提供サービスなどの基本情報は、公式Webサイト、Googleビジネスプロフィール、SNS、各種店舗検索サービスなど、さまざまな場所に掲載されている。一つの店舗であれば個別に確認できても、店舗数が増えれば管理対象も増える。営業時間やサービス内容を変更した際、本部のWebサイトは更新したがGoogleには旧情報が残っている、といった状況も起こり得る。
必要になるのは、「Googleを誰が更新するか」「SNSを誰が運用するか」という媒体単位の管理だけではない。店舗情報の元となるデータをどこで管理し、変更があった際に誰が各媒体へ反映するのかという設計まで考える必要がある。新たなAI対策に予算を投じる前に、自社がすでに持っている店舗情報を正確に管理できているかを確認することが出発点になる。
パチンコホールにも共通する店舗情報の課題
地域商圏を基盤とするパチンコホールにも同じ課題がある。店舗名、所在地、営業時間といった基本情報に加え、駅からのアクセス、駐車場、設備、遊技環境など、利用者が来店を判断するための情報は多い。公式サイト、Googleビジネスプロフィール、SNSなど、情報を発信する場所も増えている。
これまでは「Webサイト運営」「MEO」「SNS運用」と媒体ごとに販促施策を分けて考えることが多かった。AIが複数の情報源を参照しながら回答する環境では、それぞれを独立した媒体として管理するだけではなく、一つの「店舗情報」として捉える視点が必要になる。AI検索が店舗選びの中心になると断定できる段階ではなく、AIに表示されるための確実な方法が判明しているわけでもない。経営者に問われるのは「AI対策として何を始めるか」だけではなく、自社の店舗について正しい情報はどこにあり、誰が管理し、変更があったときにどこまで反映されるのかという情報管理の仕組みだ。
「検索されたときに見つかる店」から、「AIを含め、外部からその店を正しく理解できる状態」へ。生成AIの登場によって、これまで販促の一部として扱われてきた店舗情報を、企業が管理すべき情報資産として捉え直す必要性が高まっている。
文=アミューズメントジャパン編集部
















