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2018年10月26日
No.10000870

教育に力を入れれば優秀な人材が集まる
業績拡大と離職防止に効果あり

「社内研修と外部研修では効果に大きな違いが出る」。こう断言するのは、パーソル総合研究所ラーニング事業本部の岡田司部長だ。特に仕事に対するマインドを高める研修ほど違いは顕著に。加えて教育研修は採用や離職率の低下にも効果があるという。


総合人材サービスを手掛けるパーソルグループの総合研究機関として、「人と組織の成長創造」に向けた調査・研究、コンサルティングサービス、人事関連サービスを提供するパーソル総合研究所(東京都渋谷区)。岡田部長が所属するラーニング事業本部は、さまざまな業界の企業向けに課題解決型の研修を行っている部署だ。

人材育成、組織開発の領域で約10年のキャリアをもつ岡田部長は主にマネジメント業務に携わる傍ら、業界を問わず大手企業などで外部講師として活躍している。

研修コンテンツは大別すると、①業務遂行やスキルを習得するために必要な知識を学ぶ「知識系」、②仕事の質を高めるために必要なスキルを学ぶ「スキル系」、③自己や組織の意識を高めるために気づきを促す「マインド系」、④現状の仕事の課題を解決するために行動を見直す「課題解決系」の四つに分類できる。

どの分類の研修にもそれらを得意とする外部の専門家はいるものだが、コストやリソースを削減したり、ノウハウを蓄積するために研修を内製化している企業がある。しかし、とりわけ③の「マインド系」では外部講師を招く方が効果的だと岡田部長は指摘する。

「停滞した社内の雰囲気に刺激を与えることが外部講師の務めです。顔見知りの社内講師が相手では、モチベーションを上げようにも甘えが出やすい。外部講師の技量にもよりますが、社内では指摘しづらいことに言及したり、客観的なエビデンスによる気づきを与えられることが外部講師のメリットです」

社内研修にも外部研修にも一長一短はあるが、外部研修は新たな気づきを得られ、行動変容が起きることに期待できる。ビジネス研修に求めることが「業績への反映」であるならば、新たな一歩を踏み出すためにも外部研修を検討することが賢明と言えるだろう。


研修がもたらす離職防止効果
近年、サービス業全般でトレンドになっている研修テーマは、従業員の定着に関するものだ。特に注視されているのがパート・アルバイトの定着率。どうすれば彼らの離職を抑えられるかが最大の関心事になっている。長引く人手不足で新規雇用が難しい中、従業員の離職は大きな痛手だからだ。

「当社は2025年時点で583万人の労働力が不足すると推計しています。情報通信・サービス業では482万人の不足。これは現在の2倍以上の不足度です」と岡田部長は言う。

この推計値は、経済成長率0.8%が2025年まで継続した場合に必要となる就業者数と、人口動態から推計される就業者数のギャップから算出している。現実味を帯びるこの推計値から言えることは、「従業員が辞めにくい職場環境づくりは継続的に取り組まなければならない」ということだ。


では、どうすればパート・アルバイトの離職率を下げることができるのか。非常に参考になるのが、経営学習論・人的資源開発論を専門とする立教大学の中原淳教授がパーソル総合研究所と共同で行った大規模調査だ。外食、小売、運輸業界の協力を得て、大手企業7社8ブランドに関わる総勢2万5千人にアンケートを行い、現場の声を拾い集めた。

調査は五つに分けて行われ、求職者編、離職者編、店長・マネジャー編、面接者編、スタッフ編で構成されている。いずれもインターネットを使用した定量調査で、実施年は15年と16年。ここまで大規模で、かつ離職者まで追跡した調査は国内で初めてだろう。

「調査結果から見えてきたことは、長く活躍してもらうために極めて重要な要素が、面接や職場マネジメントにあるということです。これは最近の流れの中で注目すべきポイントでしょう」

近年の店舗型ビジネスでは大手を中心に、本社一括採用が行われてきた。おおまかに言えば応募受付から合否判定までを本社機能が行い、店舗では採用された人員と顔通しする程度。合理化を図る上では効果的だが、その弊害が店舗側に生じていると岡田部長は指摘する。

「本社が採用してくれるので、店舗は来てくれたスタッフを使うだけの感覚に陥りやすい。採用コストや人を育てるという意識が希薄化し、あまつさえ『もっと良い人を寄越してくれよ』といった不満を持ち始めることがあります。これでは離職率を抑えることはできません。現場責任者の正しい理解が人手不足解消の第一歩なのです」


これからは人への投資がさらに重要になる。岡田部長も「教育や研修に取り組まない企業は今後、淘汰されていくでしょう。研修に無関心であることは無言のメッセージとして従業員に伝わり、モチベーションの低下、離職率の上昇、採用コストの肥大化を生じさせます」と警鐘を鳴らす。

さらにBtoCの企業であれば、その影響は顧客の反応にも及ぶ。前出の大規模調査では、アルバイトに応募する前にその店舗に下見に行ったかどうかという設問があり、43.1%の応募者が下見をしたと回答している。単純な店舗利用の経験で聞けばもっと割合は増えるだろう。店舗は知らない間に、応募者や顧客からチェックされているのだ。

良い人材が働いている環境に、良い人材は集まる。教育・研修は業績拡大と同時に、採用面での投資となる。すぐに結果が現れないと無碍にするのではなく、腰を据えて取り組み続けてもらいたい。

パーソル総合研究所の岡田部長


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