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2019年04月22日
No.10001146

どうする!?消費税対応
8%時の先延ばし課題再び

どうする!?消費税対応

消費税率を8%から10%に変更する増税が今年10月に迫る。ホール業界では2014年の8%への増税時に積み残した課題も残る。今年予定されている増税に業界はどう臨むのか。


いまから30年前の1989(平成元)年4月に施行された消費税法。当初3%だった税率は1994年に5%になり、2014年4月1日に8%になった。このとき2015年10月1日から税率を10%に上げることがセットになっていたが、当時の安倍首相は8%増税後の消費低迷を受けて、10%への増税を2017年4月1日に先送りすることを表明した。しかし201 6年8月、政府はまたも消費低迷を理由に10%への増税を2019年10月1日まで2年半先送りすることを閣議決定した。

こうした経緯を受けて実施が予定されている今年10月1日の消費税率アップだが、4月に統一地方選挙、7月に参議院選挙が控える。予定通り10月1日に増税が行なわれるかどうかの最終判断は選挙後になりそうな気配だ。

とはいえ、財務省を中心に10%への増税に向けた準備は着々と進んでいる。軽減税率の導入や、プレミアム商品券の導入、キャッシュレス決済によるポイント還元など、増税後の消費を支えるためのさまざまな措置が検討されている。


遊技料金の上限は4円+消費税

では、ホール企業は10%への税率アップにどう備えればいいのか。それを考えるにあたり、2014年の8%への税率アップ時を振り返ってみたい。

8%への増税を翌年4月に控えた2013年から2014年にかけて、増税に向けてふたつの動きがあった。ひとつは遊技料金の賞品交換時の消費税の徴収についてだ。警察庁は2013年8月27日に風営適正化法の解釈運用基準の変更を各都道府県警に通達。「賞品の提供方法に関する基準に関する記載の追加」があり、「遊技客が遊技によって得た玉の賞品交換時の価値は〈遊技料金+消費税〉である貸玉料金に個数を乗じた額に対応する」と明確化された。業界側は「消費税込みの貸玉料金ではなく、遊技料金に対応させるのが本来の姿」との見解を示していたが退けられた。

もうひとつが遊技料金の規定についてだ。ホール5団体は2013年11月、遊技料金の表示案を警察庁に提示した。当時の風営適正化法施行規則では「料金表等」を来店客が見やすいように示すことを義務づけており、パチンコ営業は「遊技料金」を表示することと定めていた。この「遊技料金」について、当時の規則では「消費税を含まない金額」と定義されていた。

この規則に則ると、例えば4円パチンコの「4円」表記は消費税法の総額表示の趣旨にかなうものの、風営適正化法上では「遊技料金3.81円」の表示が妥当になる。消費税率が8%に引き上げられた際、貸玉料金を4円に据え置くと遊技料金は3.7円に変わる。そのため、変更届けの必要性が生じる可能性があった。また、100円24個など、消費税を顧客に転嫁する徴収方法を取るために個数調整を行った場合、ひと玉あたりの価格が割り切れずに、正確な表示ができないという問題が発生することが懸念された。

ホール5団体では、こうした問題点や表示方法に関する疑問点について警察庁に質問。それに対して2014年1月23日の会合で警察庁から現行の風営適正化法施行規則の改正(同年4月1日施行)を前提とした説明があった。改正案では「遊技料金」の上限金額を玉1個につき「4円に消費税を加えた金額」とされた。

警察庁では1月24日にこの改正規則案を公表しパブリックコメントを実施。改正案は(1)遊技料金に関する基準、(2)賞品の価格の最高限度に関する基準、(3)その他要所の改正、が盛り込まれた。


遊技料金徴収に3つのパターン

この規則改正を受けて全日遊連では3月12日、新たな遊技料金の表示方法について、下記の通り発表した。
(1)4月1日以降、税込遊技料金を据え置く場合は、従来どおり「1個(玉)4円」「1枚20円」で変更の必要はない。
(2)個(枚)数調整で実質値上げを行なう場合で、玉1個、メダル1枚の料金が割り切れない場合は最少貸出単位の玉個数またはメダル枚数と金額で表示する(税率8%の場合の表示例/「24個100円(100円24個)」「116個500円(500円116個)」「47枚1000円(1000円47枚)」)。
(3)税抜料金に消費税率をかけた料金を遊技料金として表示する場合(例:4円×1.08=4.32円)は小数点以下第2位までで表示できる(税率8%の場合の表示例/「1個4.32円(25個108円)」「1枚21.6円(50枚1080円)」)。

また、改正規則では、賞品価格の最高限度に関する基準について、従来の1万円から「9600円に消費税相当額を加えた金額」に変更された。
以上が、2014年の8%への税率変更時の経過だが、その結果、ホールの対応は大きく3つに分かれた。
① 上記(1)に基づいて、遊技料金を変更しない(消費増税分はホールが負担。実質値下げ)。
② 上記(2)に基づいて、「個数調整方式」での消費税のユーザー負担(実質値上げ)。
③ 上記(3)に基づいて、「カード減算方式」での消費税のユーザー負担。


パチスロで進んだ消費税転嫁

ではその後の運用はどのようになっていったか。③の「カード減算方式」は、4円パチンコの場合「1玉4.32円」などと表示し、まず540円で125玉を貸出し、次に432円で100玉を貸し出し、残高の28円をカードで現金と精算。遊技料金と等価となる賞品交換の際は5000円相当の賞品が1250玉(税率5%)だったのが1158玉(税率8%)での交換となった。この方式は、増税後に導入したホールがあったものの、28円が残ったカードを交換せずに持ち帰る遊技者が出るなど運用上のデメリットが大きかったため、その後姿が消えていった。

その結果現在では、①の「遊技料金を変更しない」と、②の「個数調整方式での消費税転嫁」の2つの運用に分かれている。

サン電子のデータ提供サービス「TRYSEM」によると、今年2月時点の比率は4円パチンコで「遊技料金を変更しない」(1玉4円、1000円250玉など)が88%で、「個数調整方式での消費税転嫁」(1玉4.32円、1000円232個など)が12%、20円パチスロでは「遊技料金を変更しない」(1枚20円)が52%で、「枚数調整方式」(1000円47枚など)が48%だった。

パチンコで個数調整方式が進まない理由は、個数調整に対応していないユニット(遊技機からの最少払い出し25個)がまだ相当数残っているためとみられる。逆にパチスロではユニットの設定変更だけで1000円47枚という運用ができることと、賞品交換時の価値が高いことを望むユーザーが多いことなどから消費税転嫁が進んだとみられる。


先送りされた課題

2014年の増税時は、翌2015年10月1日からの10%への税率変更というスケジュールが予定されていたため、「消費税対応は10%の増税時に」と考えた企業が多かった。その後、2度にわたる増税の延期で、消費税対応は忘れ去られたように5年間放置されてきた側面もある。

言わずもがなだが、消費税は原則消費者が負担するものだ。遊技料金を1玉4円で提供しているホールは、預かり消費税分を自社の利益を削って負担していることになる。今後もさらに遊技料金1玉4円で運用するとすれば、これまで1玉あたり0.32円だった消費税が0.4円になる。5年前より売上げが減少している状況で、さらに2%分の消費税を自社で負担し続けることは財務的に大きな負担になる。遊技料金を値上げするためにユニットの交換が必要になるホールもあるだろう。遊技料金を据え置く場合はコスト削減や交換率の変更などで消費税分を賄うことも考えなくてはならない。


遊技料金変更時の貯玉の扱い

もうひとつ、消費税の税率変更で対応しなければならないのが、貯玉・貯メダルシステムだ。遊技料金を変更する場合に限定されるが、変更前の貯玉・貯メダルとは異なる扱いにしなければならない。それについては、これまで通り遊技料金の変更をする際にシステム提供メーカーに相談して対処している方法で行なえば問題ない。

一方で、2014年の増税を機に、システム提供会社が貯玉・貯メダルの複数の貸玉料金に対応した乗り入れ機能を開発。現在では多くのホールで乗り入れ機能が運用されている。この乗り入れ機能を導入しているホールでは、遊技料金変更で新たな乗り入れ口座を作れば対応できそうだ。

しかし、システムによっては設定口座数が限られている場合があるので注意が必要だ。遊技場自動サービス機工業会では「どれだけの口座を作れるのか、事前にシステム提供会社に確認してほしい」と呼びかけている。




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