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2019年10月21日
No.10001411

特集 企業の成長を支える人材を育てる
“UP or OUT”が企業を健全化する
[インタビュー]フランシスコ・ビダル アドミラル カジノ スペイン COO

“UP or OUT”が企業を健全化する
アドミラル・カジノ・スペイン(NOVOMATIC GROUP)」のCOO、オペレーションディレクターとして、マーケティング、F&B、IT、HR、セキュリティー&サべーランス、会計監査、ゲーミングオペレーションの指揮を執る。

業務に直結しない教育は一部の従業員の「特権」である──

カジノディーラーの多くは2年もするとたいていの種目のディーリングは覚えてしまい、そこから急速に知識の吸収量はフラット化し、同じ作業の繰り返しの中で、「飽き」が始まるのが現実。しかし空調が効いた空間、座り仕事、定期的な休憩時間と、恵まれた労働環境にあるため自ら辞める従業員は少ない。管理職ポストの登用に生え抜き優先主義を掲げるNOVOMATIC GROUPのフランシスコ・ビダルCOOは、この問題を乗り越えるために「Up or Out」制度の導入を提唱している。〔文中敬称略〕
by Tsuyoshi Tanaka (Amusement Japan)

INTERVIEW
フランシスコ・ビダル アドミラル カジノ スペイン COO
Francisco Javier Vidal Caamaño
COO - Director of Operations ADMIRAL CASINOS SPAIN


Francisco Javier Vidal Caamaño
COO - Director of Operations ADMIRAL CASINOS SPAIN


──カジノ企業においては、ディーラーの「能力開発」をどう定義していますか? ディーリングのプロフェッショナルであればいい、という考え方は一般的ですか?

ビダル 私の見解では、ほとんどのサービス業は、最前線の従業員について同じ課題に直面しているはずです。それは、「どうしたら彼らに最大限に活躍してもらえるか」「彼らの生産性と社会的価値を高めるために企業は何ができるのか」というものです。カジノディーラーの場合は、その基本的な仕事は反復的な性質ですが、当社は、いかにしてゲストにギャンブリングを楽しんでもらい顧客体験を向上するかに焦点を合わせています。そのため、ディーリングの技術向上だけでなく、プレイヤーとうまくやり取りする能力を高めることが必要だと考えています。私は昔、ラスベガス、リノ、ラテンアメリカのいくつかのカジノで、ディーラーをエンターテイナー、いわゆる「ディーラーテイナー」として育成しようとするプログラムを見てきました。とくに、ゲーム経験の浅いプレイヤーに対してフレンドリーな体験を提供しようという場合、非常にいいアプローチだと思います。顧客体験の向上に直接的な関連がない、例えばマーケティングやファイナンンスなど広範なトレーニングプログラムを全従業員に対して提供することは、あまり意味がないというのが私の考えです。一部の従業員に提供されればよいものです。

──一部の従業員とは?

ビダル ディーラーとしてスタートすることは、カジノ産業への入口として良い方法です。現実には2年を過ぎると、目の前の反復的な業務はできるものの、それ以上の成長が止まるディーラーが大勢いるのが現実です。しかし、ゲストやオペレーションスタッフとのやり取りに慣れて、ゲーミングフロアで何が役に立ち何が役に立たないか、規律やストレスの下で働くことを学んでいく従業員もいます。これは長期にわたって有用なスキルです。こういったことを身につけた従業員は将来のマネジャー候補になるので、彼らに対してビジネス教育が施されることになります。従業員に対するビジネス教育には多くの費用と時間がかかるので、それを受けるのは従業員の権利ではなく特権です。こういった教育を受けられることが従業員にとっての野心的な目標にできれば、すべてのディーラーにとってより魅力的なものになります。しかし結果的には、ある時点で解雇せざるを得ない従業員の一群というべきものが生じます。



進歩するつもりがないなら
会社に留まるべきでない


──その「特権」を目指さない従業員は解雇の対象なのですか?

ビダル はい。なぜなら、進歩するつもりがないならば、会社に留まるべきでないからです。そして選ばれた少数が会社の未来のリーダーになるためのビジネス教育を受けることになります。先ほども述べたように、全員に高度なビジネストレーニング・プログラムを実施することは財源の浪費です。重要なことは”勝者”に対する処遇を間違えないことです。これは絶対に実力主義的なプロセスでなければならず、最高の中の最高の人材だけを訓練して昇進させなければなりません。なおかつ、従業員の大多数がそれを公平なプロセスだと思えるべきです。

──仮に、10年間カジノディーラーとして働いて解雇された場合、ディーラー以外の職に就こうと思った場合、労働市場ではどのように評価されていますか?

ビダル ディーラーとして他のカジノで採用されることは難しくないでしょうが、他の仕事に就こうと思った場合、ディーリング技術を持っているだけでは労働市場での価値は極めて低いでしょう。しかし、当社で働いてきたことが評価されないのは遺憾です。昨今、「企業の社会的責任」という言葉がよく使われますが、現実にはこの考えに本当にコミットしている企業は非常に少なく、多くの企業はこれを単なるお題目、世間での会社のイメージを良くするためのマーケティングと広報の費用と見ています。しかし、カジノを含めたホスピタリティ産業においては最前線の従業員こそが直接ゲストに接しているのです。私は、企業が真っ先に責任をもってケアすべきステークホルダーは従業員だと思います。ですから当社はたんに機械的なディーリング技術のみを教えるのではなく、ホスピタリティスタッフ、エンターテインメントスタッフとして育成しています。


>>>本インタビュー記事の全文は月刊アミューズメントジャパン2019年11月号に掲載しています。


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