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タイ新政権 娯楽目的の大麻使用を禁止に
タイは2022年6月に、国内で使用が禁止されている「麻薬リスト」から大麻を除外し、アジア地域で初めて娯楽目的の大麻使用を解禁した。しかし、昨年5月におこなわれた下院総選挙を経て9月に誕生したタクシン派タイ貢献党を中核とする連立内閣は、これを再び禁止するとみられる。娯楽目的での大麻使用の禁止は、新政権の選挙公約のひとつ。
CNN、ロイターなどの報道によると、1月9日にタイ保険省は政府が制定の準備を進めている法案の概要を発表。同省のWebサイトに掲載された資料によると、大麻および大麻関連製品は医療及び健康目的のみに限定され、違反者には高額の罰金もしくは懲役刑が科される。
2023年にバンコクを訪れた日本人によると、「バンコクの繁華街では堂々と大麻の葉のマークを掲げたショップやカフェがいくつもあり、乾燥大麻や大麻入りの食品をたやすく購入できる。合法的な嗜好品として地位を急速に固めつつあるように感じた」と言う。国内需要だけでなく、大麻目的の観光客も期待され、市場規模は2000億円に拡大するとの試算もあった。
嗜好品としての大麻使用を合法化している国はまだごく少数で、欧米では、アメリカの一部の州、カナダ、メキシコ、ルクセンブルク、マルタなど。オランダは実際には一部の都市で実証実験を始めた段階であり、合法化しているわけではない。
米国ネバダ州では2016年に娯楽目的の大麻使用を解禁し、2017年に嗜好用大麻販売店の第1号店がオープンしている。筆者が同年11月にラスベガスを訪問したとき、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)ではまさしく嗜好品用大麻の見本市が開催されており、会場の外にまで甘い香りが漂っていた。
2021年2月に発行された調査レポート『The Effect of State Marijuana Legalizations: 2021 Update』によると、2020年時点で嗜好品用大麻を合法化していた米国の州は11。嗜好品用大麻を合法化によって懸念されていた影響について評価したところ、これらの州では「成人マリファナ使用」や「税収」は増加したものの、「自殺率」「暴力犯罪」の増加は見られなかったとしている。
タイにおける娯楽目的の大麻の使用は年内にも禁止される可能性が高まったが、すでに栽培、流通、販売の態勢ができあがっている。前出の日本人は「医療や健康用途に限られるとのことだが、どこまで厳格化されるかしだい。規制が緩いものなら、使用できる場所が限定されるだろうが、実質的には娯楽目的使用の市場は存続し、観光振興施策のような名目で一部の事業者が市場を独占する形になるかもしれない」と言う。
文=田中 剛(アミューズメントジャパン編集部)