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2026年07月27日
No.10005323

シリーズ/いま、サンセイを読み解く第1回|機種開発の方向性と未来にチャレンジする環境づくり
「牙狼」20周年の先へ。市場を動かす意志を追う

シリーズ/いま、サンセイを読み解く第1回|機種開発の方向性と未来にチャレンジする環境づくり

TOP INTERVIEW
サンセイアールアンドディ
山本和弘
代表取締役社長


サンセイアールアンドディは2027年、パチンコの『牙狼』シリーズを発売してから20周年を迎える。この節目に同社をけん引するのは営業の現場から『牙狼』を生み出した山本和弘社長。業界の歴史に大きな足跡を刻んだ山本社長が描く遊技機とはどんなものなのか。そして今後のサンセイはどう進んでいくのか。5回シリーズでお届けする1回目は、サンセイのモノづくりについて聞いた。


原点はホール様の現場にあった

──今月から5回にわたり、サンセイアールアンドディが何を目指している企業なのか、山本社長にお聞きします。1回目のテーマは「機種開発の方向性と未来」。まずは山本社長の経歴を聞かせてください。

山本 私は1974年生まれです。2002年にサンセイに入社しました。最初に配属されたのは上野の東京支店。営業として毎日のようにホール様を訪問していました。その頃に学んだことは今でも自分の中に強く残っています。遊技機メーカーの営業マンは、どうしても、「この機械は面白いです」「スペックが良いです」「演出が強いです」といったことを言いたくなります。でも、ホール様はそれだけでは判断していなかったのです。この機械を何台入れるのか。自店のお客様に合うのか。競合店との差別化になるのか。長く使うことができるのか。利益を取りながら、お客様にも納得していただけるのか。そうした点を、本当に真剣に考えられていたのです。入社したての私は、それを営業の現場で学ばせていただきました。ですから今でも機械を見る時に、単に「面白いかどうか」だけでは評価しません。ホール様がどう扱えるか。ユーザーがどう感じるか。店の中でどう存在感を出せるか。そこまで含めて遊技機の価値だと思っています。


機械は「売るもの」ではなく「育てるもの」

──営業時代の経験はその後の商品企画や『牙狼』シリーズにもつながっているのでしょうか。

山本 もちろんつながっています。むしろ、そこが私の土台です。営業の仕事は機械を売ることだと思われるかもしれません。でも実際は、ホール様と一緒に考えることが仕事です。どの島に置くのか。どのタイミングで導入するのか。どのお客様に向けて見せるのか。どんな販促で伝えるのか。稼働が落ちた時にどう支えるのか。そういう話をしながら、ホール様との関係を作っていく。私はそこで、機械は「販売して終わり」ではなく、「導入後にどう育てるか」が大切なのだと学びました。

──営業の次はどんな仕事を?

山本 営業本部で販促や販売戦略に関わりました。そこでさらに、機械の価値は台の中だけでは決まらないと学びました。どんなストーリーでホール様に伝えるか。ユーザーにどう期待してもらうか。営業がどんな言葉で提案するか。そこまで含めて市場で勝負するのだと。この考え方は、商品企画として『牙狼』に関わった時にも大きく影響しています。


初代『牙狼』で学んだ空気を変える機械

──山本社長は初代『牙狼』の生みの親としても知られています。『牙狼』はサンセイの企業イメージを大きく変えたシリーズになりました。

山本 初代『牙狼』は私自身にとっても特別な機械です。当時私が感じたのは、ヒット機というのは単に多くの台数が売れる機械ではないということです。市場の空気を変え、ホール様の期待感を変え、ユーザーの行動を変え、営業の気持ちを変え、開発の意識を変える。そういう機械が存在するのだと、『牙狼』で強く感じました。『牙狼』は、ホール様にとって「扱う理由」がある機械でした。ユーザーにとって「打ちたい理由」がある機械でした。そしてサンセイにとっては、「自分たちでも市場を動かせる」と思わせてくれた機械でした。でも、その先もありました。『牙狼』が成功したからこそ、私たちはそこに甘えるわけにはいきませんでした。『牙狼』を強くし続けること。『牙狼』以外の新しい柱も育てること。そして、サンセイらしい挑戦を止めないこと。この3つを同時にやらなければならないという新しいミッションが加わったのです。


サンセイの開発の2つの考え方

──一般に開発には、プロダクトアウトとマーケットインという2つの考え方があります。この考え方をどのように捉えていますか。

山本 難しく考える必要はないと思っています。プロダクトアウトは、サンセイが信じる面白さを市場に問う機械です。これは、サンセイだから作れるもの、サンセイだからやる意味があるものです。『牙狼』がまさにそうです。「『牙狼』ならこうあってほしい」「『牙狼』ならこれくらい突き抜けてほしい」「『牙狼』なら市場の空気を変えてほしい」。そういう期待に対して真正面から応える。これが、サンセイが信じる面白さを出す作り方です。

──もうひとつは?

山本 マーケットインは市場やユーザーの不満から逆算して作る機械です。今のユーザーは何にストレスを感じているのか。ホール様は何に困っているのか。どうすればもう一度、気持ちよく打ってもらえるのか。そういう現場の声から考える作り方です。この2つは、どちらか一方ではありません。両方必要なのです。サンセイが信じる面白さで市場を動かす。一方で、市場の声を聞き、ホール様やユーザーに寄り添う。この両方ができる会社にならなければ、これからの時代は戦えないと思っています。



サンセイが信じる面白さで市場を動かす

『牙狼』はサンセイが市場に問う機械

──プロダクトアウト型の代表が『牙狼』ですか?

山本 はい。『牙狼』は、市場に合わせて作る機械ではありません。もちろん市場は見ます。ホール様の声も聞きます。ユーザーの反応も見ます。ただ、それだけで『牙狼』を作ってはいけないと思っています。『牙狼』には、『牙狼』にしかない期待感があります。一撃への期待。演出の熱量。金色の存在感。「『牙狼』ならやってくれる」という感覚。これは、データだけで作れるものではありません。サンセイが長年積み上げてきたブランドの力です。だから『牙狼』は、サンセイが信じる面白さを市場に問う機械なのです。ホール様にも、ユーザーにも、「これが今のサンセイの『牙狼』です」と胸を張って出す必要があります。ただ、過去の『牙狼』をなぞるだけではいけません。時代が変われば『牙狼』の見せ方も変えなければならない。規則が変わり、ユーザーの感覚が変わり、ホール様の投資判断も変わっている。その中で『牙狼』らしさをどう進化させるか。それがこれからの大きなテーマです。


「コテスタ」はユーザー目線から生まれた

──一方で、マーケットイン型の開発例として、『eようこそ実力至上主義の教室へ』の「コテスタ」があります。これはいまのパチンコ市場を非常に意識した機種ですね。

山本 はい。「コテスタ」はユーザー目線から生まれた挑戦だと思っています。今のパチンコで、ユーザーがストレスを感じる場面の一つに、「回らない」「保留が途切れる」「液晶が止まる」という感覚があります。もちろん、ホール様にはホール様の営業上の事情がありますので、簡単に解決できる話ではありません。ただ、ユーザーの気持ちとしては、座った以上は気持ちよく打ちたい。せっかく遊びに来たのに、すぐにストレスを感じてしまう。ここに向き合わないと、パチンコの魅力は少しずつ弱くなってしまうと思っています。「コテスタ」は、その課題に対する一つの答えです。ただし、誤解していただきたくないのは、「コテスタ」を搭載すればすぐにホール様から共感を得られるという簡単な話ではないということです。むしろ、ホール様にとっては利益の取り方や運用の考え方が変わる部分もあります。「本当に使いやすいのか」「利益は取れるのか」「お客様は反応するのか」。そういう不安が出るのは当然です。だからこそ、これはチャレンジなのです。


共感を得るために丁寧に伝える

──「コテスタ」に関して、ホールから共感を得るのは簡単ではない。この視点は重要ですね。

山本 その通りです。メーカーが新しい仕組みを作ると、どうしても「これは新しいです」「これはすごいです」と言いたくなります。でも、ホール様からすれば、新しいこと自体が価値ではありません。自店の営業にとって意味があるかどうかが大事です。「コテスタ」も同じです。ユーザーにとってはストレスが減少する。でもホール様にとっては、運用面で慎重に見なければならない。その両方を理解しなければいけません。

そのため、サンセイとしては「コテスタ」を単なる機構として説明するのではなく、ホール様にとっての意味を伝えていく必要があります。今の時代は「どこのお店で打っても同じ」と感じられやすい。その中で、「この店では気持ちよく打てる」「この店は遊技環境にこだわっている」と伝えられることは差別化になります。「コテスタ」は、ホール様がそういう姿勢を見せる一つの材料になり得る。でも、それを押し付けてはいけない。ホール様の考え方に寄り添いながら丁寧に伝える必要があります。


挑戦とは学び続けること

──新しい取り組みには、リスクもあると思います。

山本 それは当然ありますね。新しいことをすれば必ず賛否がある。最初から全員に受け入れられるものなど、ほとんどありません。大事なのは、失敗しないことではなく、学び続けることです。「コテスタ」も完全な答えだとは思っていません。ユーザーから評価される部分もある一方で、ホール様の運用や、パチンコらしい玉の動きの楽しさという点では、もっと考える余地がある。そういう声を受け止めて、次に生かす。これが開発だと思っています。サンセイは挑戦して終わりの会社ではなく、挑戦を次の財産にする会社でありたい。『牙狼』もそうでした。最初からすべてが完成していたわけではありません。市場に出て、ホール様に育てていただき、ユーザーに打っていただき、営業が声を拾い、開発が次に反映する。その繰り返しでブランドになってきました。これからの新しい取り組みも同じです。


『牙狼』だけでは終わらない

開発と営業を分けて考えない

──山本社長の経歴を見ると、営業、販売戦略、商品企画、そして経営へとつながっています。これまでの経験は、今の会社経営にどう生きていますか。

山本 私は開発と営業を分けて考えたくありません。営業は売る人。開発は作る人。販促は宣伝する人。そういう分け方だけでは、これからの時代は難しいと思っています。営業は、ホール様の声を一番近くで聞いています。開発は、機械の可能性を一番深く知っています。販促は、ユーザーにどう伝わるかを考えています。商品企画は、その全部をつなぐ役割です。これらがバラバラに動いていては、良い機械は市場で育ちません。私自身、営業から始まり、営業本部で販促や販売戦略を学び、商品企画で『牙狼』に関わってきました。だからこそ、部門を超えて一つの機械を育てることの大切さが分かります。代表取締役となった今、やらなければいけないのは、サンセイ全体をそういう会社にすることです。


社員が挑戦できる環境を作る

──チャレンジする環境づくりという点で、社長として何を大切にしていますか。

山本 社員が挑戦できる環境を作ることです。ただし「挑戦しろ」と言うだけでは、人は挑戦できません。挑戦するには、時間が必要です。情報が必要です。失敗を受け止める空気が必要です。部門を超えて相談できる関係が必要です。そして何より、自分の仕事が会社の未来につながっていると感じられることが必要です。サンセイは決して大きな会社ではありません。だからこそ、一人ひとりの動きが会社を変えます。営業がひとつホール様の声を持ち帰る。開発がひとつ改善する。販促がひとつ伝え方を変える。そうした積み重ねが、機械の価値になります。私は、社員が「自分たちがサンセイを作っている」と感じられる会社にしたい。そのためには、会社として挑戦を評価し、学びを共有し、次の機械につなげる仕組みを作らなければいけません。


ホール様と一緒に市場を考える

──ホール企業に向けてサンセイのこうした開発姿勢をどう伝えたいですか。

山本 ホール様には、サンセイが単に機械を売る会社ではなく、一緒に市場を考える会社になろうとしていることを感じていただきたいです。新しい機械を市場に出す時、私たちはもちろん数多く販売したいと思っています。ですが、それだけではありません。この機械はどんなお客様に合うのか。どんな店で強みが出るのか。どう使えば長く残せるのか。どう伝えればユーザーに届くのか。次の機械にどうつながるのか。そこまで一緒に考えたいです。「コテスタ」のような新しい取り組みも、『牙狼』のような強いブランドも、ホール様と一緒に育ててこそ価値になります。サンセイだけで完結するものではありません。ホール様にも、「サンセイは今、こういう挑戦をしているんだ」ということを見ていただきたい。そして、良いところも課題も率直に言っていただきたい。その声が、次の機械を良くします。







やまもと・かずひろ
1974年、鳥取県生まれ。2002年4月、株式会社サンセイアールアンドディに入社し、営業本部東京支店に配属。ホール様への営業に従事し、現場のニーズを深く理解する経験を積む。その後、営業本部において販促企画および販売戦略の立案に携わり、事業の発展に貢献。さらに開発製造本部へ異動し、初代「牙狼」の開発を担当するなど、商品開発分野においても実績を重ねる。以降、専務取締役、代表取締役副社長を歴任し、2024年4月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。


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