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フェアスタートはパチンコを変えるか
WINSOME・菅原和俊氏×ノンブルマーケティング・齊藤晃一氏
『e ソードアート・オンライン アリシゼーション 夜空』に搭載された「フェアスタート」が、パチンコの新たな可能性を示している。回転数への不安を抑え、ユーザーが遊技を始めやすい環境をつくる一方、その価値を長期稼働や市場の活性化につなげるには課題も残る。遊技業界企業へのアドバイザリー業務などを行うWINSOMEの菅原和俊氏と、ノンブルマーケティング代表取締役の齊藤晃一氏が、夜空の実績から現在のパチンコ市場を読み解き、フェアスタートの先にある可能性を語った。
夜空が示したパチンコの課題と可能性
――まず、現在のパチンコ市場をどう見ていますか。
菅原 ここ数年のパチンコを見ると、勝率は下がっているのに、勝ったときの金額は上がっている。今のパチンコメインコーナーには、勝率が低くても大きく勝てる機械がかなり多くなっています。パチスロにはジャグラーのような低単価の機械もあれば、高単価AT機もある。でもパチンコは、勝ち金額を求める方向にかなり偏っている。それはパチンコが低迷している要因の一つだと思います。
齊藤 今はホール側がお客さんを選べる時代ではないと思っています。大きな勝ちを求める人もいれば、投資リスクを抑えながらレジャーとして遊びたい人もいる。それぞれのターゲットに対して適切な価値を提供していかなければならないと思います。
――そうした中で登場した夜空を、どう評価していますか。
齊藤 入口は素晴らしいと思います。ライトユーザーからも好評で、特に導入当初の勝率は非常に高かった。フェアスタートはスタートの分散が少ないですよね。それは安心感につながる。一方で、ほかのパチンコは同じ機種でも店舗や台によってかなり条件が違う。フェアスタートは、そこをある程度揃えられるというのが大きいです。「コスパ・タイパ・計算出来る」若い世代の価値観に非常にマッチしたということでしょう。
菅原 そこはパチスロに近いところがありますよね。パチスロなら基本的に同じ設定なら同じ条件で遊べる。パチンコは、どの店で打つか、どの台を選ぶかで条件がかなり変わってきます。齊藤さんが仰る通り、パチンコ業績の低下には若い世代のパチンコ離脱が大きく影響しています。若い世代をパチンコ島に呼び戻す可能性を感じさせてくれています。
――フェアスタートは今後も広がっていくと思いますが、「フェア」という価値をどう捉えるべきでしょうか。
齊藤 「フェア」という言葉をどうブランドにしていくのかは重要だと思います。どこで打っても、誰が打っても、どの台を打っても同じということを最優先にするのか、スタートが担保されていることをフェアとするのか。今後、設定のような要素が加われば、店舗によって条件に差が出る可能性もある。そのときに何をもって「フェア」とするのかは整理しておいた方がいいと思います。
――フェアスタート機は、ホール側から見ると薄利になりやすいとも考えられます。利益の取り方についてはどうでしょうか。
齊藤 台粗が月に1万円取れない機械は悪い、みたいな考え方はアップデートしないといけない。台粗5000円でも、その状態で高稼働を長期間維持できるなら、その方が良いこともある。僕らは結局、売上があって、その売上に利益率を掛けて利益になる。売上が高ければ、利益率を下げることもできる。だから必要なのは、売上が上がって、かつ薄利でも長く動く機械なんです。そこを伸ばしていかないといけない。
菅原 ホールは今まで、粗利が取れない機械を増台していくという経験がほとんどないんですよね。売上が上がっているのに利益率が低いと、「もっと取れるんじゃないか」「取りこぼしているんじゃないか」と感じてしまう。でも、圧倒的に動く機械が出てきたときに、それでも粗利を優先するのか。それとも、とにかく動いているんだから増やそうとなるのか。そこは今まであまりなかった選択だと思います。
齊藤 昔は15銭くらいの玉粗利でも、ものすごく稼働して利益を出していた機械があったわけです。薄利でも稼働が続けば利益になる。それは過去にも経験している。かつてのパチンコ島には海を中心とした薄利長期運用の固定島がありました。もちろん、いまの時代にひとつの機種でそれだけまかなえることはありえない。でも、そこを色んなカタチで伸ばしていかないといけない。フェアスタートを入れた方が将来的に利益につながるという絵を、ホール側ももう一度考えていいと思います。
――パチンコの稼働が厳しいホールにとっても、フェアスタートは有効でしょうか。
齊藤 そういったホールほど夜空のようなフェアスタート機を導入した方がいいと思っています。パチンコから粗利を取り続けてお客を減らして、その結果、今度はパチスロから利益を取らなければならなくなる。そうすると店全体がどんどん苦しくなる。夜空やデカヘソのような機械でまずアウトを取って、そこから利益を考えていかないとこれからは厳しいと思います。
フェアスタートの次に必要なもの
――夜空やフェアスタート機を長期間稼働させるためにはどこがポイントになると考えますか。
菅原 夜空のような機械で重要なのは、上位まで行かなかった人が、また打ちたいと思えるか。機械として長く動くには、そこも大事になってくると思います。若年世代を中心にではありますが、まだまだニッチであることから客層の多様化は必須になると思います。スペックの多様化、設定搭載など方向性はいくつもありそうですよね。
――やはりフェアスタート機に設定搭載という方向性は必然でしょうか。
齊藤 フェアスタートで下限を設定し、そのうえに設定という遊びがつくわけですから、以前のパチンコの設定とはまったく違う、パチスロ同様に高設定を探す楽しみがパチンコでも再現されますよね。フェアスタートの可能性を拡げ、新しい客層をパチンコ島に呼び込むことに繋がると考えていいと思います。
――今後、フェアスタートという仕組み自体にもさまざまな機種が登場していく可能性があります。夜空のようなタイプだけでなく、別の方向性も考えられるのでしょうか。
齊藤 フェアスタート自体を一つのカテゴリーにして、その中でもさまざまなスペック、ゲーム性があっていいと思います。夜空がミドル帯でライトユーザーやレジャー層に向けたものだとすれば、もう少し射幸性が高いタイプがあってもいい。クルマでも、一つのブランドの中にいろいろなラインナップがありますよね。それと同じで、フェアスタートの中でもユーザーに合わせてバリエーションを増やしていく。「夜空は好きだけど、もう少しこういうものが打ちたい」というニーズが出てくれば、そこから次の機械につなげられます。
――パチンコ市場全体で見ても、そうした選択肢を増やすことが必要ということですね。
菅原 結局、パチンコにも選択肢が必要なんですよ。パチンコもパチスロと同じで、大きな勝ちを狙う機械しかないのではなく、違う役割を持った機械があっていい。フェアスタートがそういうカテゴリーを作るきっかけになれば、パチンコは変わってくる可能性があると思います。
フェアスタートが示したのは、単に「回りやすいパチンコ」の可能性だけではない。勝ち金額に偏った機種構成、高い粗利を求めるホール営業、遊技条件への不信感。これまでパチンコが抱えてきた課題に対し、「ユーザーが選びやすい環境をつくる」という別の方向から答えを提示した。さらには「設定搭載による新しいパチンコの遊び方」などによってその可能性は今後さらに拡がっていくことだろう。
夜空が減らした「打たない理由」を、その先の「打ちたい理由」「また打ちたい理由」へどうつなげるのか。フェアスタートの本当の評価は、そこから始まる。















