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2018年09月11日
No.10000805

パチンコ新時代へ
可能性見えた「設定付き」
初動の評価と今後の課題とは!?

可能性見えた「設定付き」
『ジャパンニューアルファ藤沢店』では、島装飾で新ジャンルをアピール

新規則で認められた「設定」機能付きのパチンコ新機種が8月下旬からいよいよ市場に登場してきた。ただし、正念場はこれからだ。2021年1月末までに、現在市場にある約260万台の旧規則機を新規則機に入れ替えなくてはならない。初動の状況と今後の課題に迫った。


8月20日から導入された新規則機3機種のうち、もっとも注目されたのは6段階設定を搭載した『Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴW』(以下、『ヴァルヴレイヴ』)だ。

DK‐SISデータによると、『ヴァルヴレイヴ』の初日と2日目の業績は店側が赤字だった(表1)。ダイコク電機DK‐SIS室室長の片瀬宏之氏は「導入した店舗の『ファンを付けるぞ!』という意気込みが感じられた」と話す。



初週平均設定は4以上

DK‐SISデータによる導入状況は、高ランク店舗が49%、中ランク店舗が40.4%、低ランク店舗が10.6%で、上位ランクの店舗ほど導入率が高かった。

導入台数は4台が13.6%、5台以上が15.3%で、3台以下が71%を占めた。導入はするが、まだ様子見というホールが多かったことがうかがえる。

全国データでは設定ごとのデータはないが、「平均のTS、TSA、継続回数、出玉率などを総合的に考えると、平均設定で4くらいあったのではないか」と片瀬氏は分析する。

この週は新機種が7機種登場したが、『ヴァルヴレイヴ』は導入から1週間経過しても7機種中2位のアウトを維持。とくに高ランク店舗の導入台数別データ(表2)では、7台以上導入した店舗が高い出玉率で営業することによって最も高いアウトになった。

片瀬氏は「業績の凋落が止まらない4円パチンコにとって、この結果は素晴らしいこと」とした上で、「現在の4円パチンコは余程の大型機種でない限り、多台数導入した店舗ほど業績が良くなるという機種はない。また1~2台導入店舗と3~4台導入店舗はほぼ同じ出玉率(玉粗利)にも関わらずアウトが同じ結果になっていることから、店舗の状況にもよるが、高ランクの店舗であれば4台導入しても良かったのではないか」と指摘する。

以前から「設定付きパチンコを活かさないと業界の明日はない」と語っていたグローバルアミューズメント代表の青山真将樹氏は、設定付きパチンコの初動の動きを「まずまず」と評価する。

「導入3日目で40台増台の発注をした法人もあると聞く。しっかりと目的意識を持って導入した店舗ではかなり手ごたえを感じているはず。1円パチンコユーザーの回遊も見られ、パチンコが大好きな人たちが、設定6で約1/119の『ヴァルヴレイヴ』なら、高設定をつかめば5千円の予算で打てると夢を見ているようで、それは良い兆しではないか」

矢野経済研究所・業績研究員主任の石野晃氏も「導入した店舗は長期運用を見据えてしっかりと使っていた」と話す。


設定付きのメリットとは

では導入したホールの感触はどうか。首都圏でグループ27店舗を展開する東和産業(東京都港区)では、『ヴァルヴレイヴ』を14店舗で合計51台導入。最多は『仙川UNO』(東京都調布市)の7台だった。同社の川口卓也執行役員営業本部部長は導入の理由について、「新しいことはなんでもやってみるのが当社の考え。それも試しに1台入れてみても仕方がない。きちんとお客様に認識していただける規模で入れるように最低でも3台と指示しました」と話す。

初動の動きについては「想定よりもアウトが入っているので、比較的反応は良かった」と胸をなでおろし「これがうまくいけば、もっとパチンコの遊び方、選び方、楽しみ方の幅が広がるのではないか」と期待を寄せる。

『ヴァルヴレイヴ』を3台導入した『有楽町UNO』の阿部岳史統轄店長は、実際に運用してみた印象について「大当たり確率を設定でコントロールできるというのはこんなに違うんだなという感覚。わかりやすく言うと思い通りになる。技術と経験によるものではなく、確率で動くので、数字の集束のさせ方は以前より楽になるのでは」と感じている。

川口部長は今後の可能性についてこう語る。
「海シリーズを打つようなハイリピーターに対して、確実に還元したいときに還元することができる。海を好んで打つお客様は、回るか回らないかではなく、当たるか当たらないかなので、当たりを体感させてあげやすくなるのは良いと思う。ただし、そうしたユーザーに対して設定付きであることを認知させたほうが良いかどうかは見極める必要があるでしょう」

『有楽町UNO』では、「新機能、6段階設定」のプレートを作成


設定3・4を中心に運用

神奈川県を中心にグループ18店舗を展開するジャパンニューアルファ(神奈川県厚木市)では、4店舗で『ヴァルヴレイヴ』を導入。『ジャパンニューアルファ藤沢店』では6台導入した。

「導入店で、2台、3台という店舗はありません。台数が少ないと低設定だけの運用になってしまいますから、導入店舗では設定を入れることを念頭に最低でも4台以上で導入しています」と話すのは同店の安東純店長。

導入後の手応えについては「3月に出た機種の仕様変更ですが、通常の新台並みに推移しています。やはり設定付きという点に新鮮味を感じるお客様が多いのでしょう。大当たりが軽めなことと、設定付きを試しにちょっと打ってみようという人が多いからかもしれません」と話す。運用面では設定4・5・6を使い、導入以来低設定は一度も使っていないという。

「導入前にシミュレーションしたところ、設定3・4を中心に使えば赤にはならないという結果でした。でも、実際運用してみると、設定4・5・6を2台ずつ入れても利益が出る時もある。6はエクストラ設定で、店側がマイナスになる確率が8割程度と言われていますが、そんなに暴れないようです」

今後の課題について聞くと「まだまだご遊技いただけている顧客が限られていると感じています。設定付きパチンコを広く認知していただけるように努めることで新しい可能性が広がると感じているので、今後の設定付き機種の導入においても良い結果を得られるように試行錯誤していきます」と設定付きパチンコに意欲を示していた。




4円パチンコ業績回復へ

期待と不安が入り混じった設定付きパチンコの導入だったが、どうやら使える可能性は見えてきたようだ。では、今後の市場はどう動いていくのか。矢野経済研究所の石野氏は「設定付きパチンコは当面、甘デジやライトミドルの確率帯で動いていくので、スタート賞球4個になってから苦戦していた甘デジ・ライトミドル帯の課題がこれで解決する」と見る。

その次の段階としてこんな道筋を描く。
「319のミドル帯の新規則機が出てきても、旧規則機319タイプの新台が設置できるので出玉感では太刀打ちできない。しばらくは旧規則機と元々出玉差が少ない海シリーズを中心に順次移行していき、200万台以上ある旧規則機の何割かは2019年中に変更しておく。その次のステップで、319のミドル帯、あるいは今後は250~300程度になるかもしれないフルスペック機を導入していくというのが今後の道筋ではないか」

設定付きパチンコの今後の課題については、パチスロのような運用にならないようにすることだという声も聞かれた。東和産業の川口部長は、「設定付きパチンコがホールの中で主流を占めた場合、設定6を朝から晩まで打たれてしまう可能性がある。そこは、本来設定付きで遊んでいただきたいお客様にメリットのあるものにするにはどうすればいいかを、メーカーとホールが真剣に、並行して考えていく必要があるでしょう」と指摘する。

グローバルアミューズメントの青山氏はこんな課題を挙げる。
「これからはどれだけ客層の幅を広げられるかが重要。1円パチンコユーザーをはじめ、シニア層や女性に設定付きパチンコの遊び方を覚えてもらう努力を、どれぐらい現場が力を入れてやれるかにかかっている」

さらに、2021年1月末を見据えた新規則機への入替については、「様子見ばかりで問題を先送りしていては先はない。目先の良い店を作るというところから逃げずに取り組まないと、2021年には撤退を余儀なくされるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

ダイコク電機の片瀬室長は、今後のホールへの期待感をこう表した。
「設定付きパチンコがファンに認められるかどうかと4円パチンコの業績回復は店舗の活用にかかっている。業界発展のためにも、今回の初動データを見た方々が『甘すぎる』と、急速に粗利確保の方向へ向かわないことを祈ります」


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