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2019年10月04日
No.10001392

低予算で人材確保
取り組むべき採用の新潮流

就職内定率の推移(出典:就職みらい研究所)

人手不足感を背景に採用活動の難易度が非常に高まっている。新規学卒者はもとより中途者もパート・アルバイトも、採用単価は右肩上がりだ。激化する採用戦線の渦中にいては、パワーゲームに巻き込まれるだけ。視点を変えれば、低予算でも人材は獲得できる。

2020年3月に卒業を見込む大学生(大学院生を除く)の就職内定率は、8月1日時点で91.2%(就職みらい研究所調べ)。前年同月を3.2ポイント上回り、過去最高を更新した。新規学卒者を除く中途市場(パートタイムを含む)でも人手不足感が強く、19年7月の有効求人倍率は1.59倍。東京(2.09倍)に至っては都道府県別の最高値だ。

多大な費用と人手がかかるようになった近年の採用活動の中、先進的な企業は低予算でも採用できる手法に注目している。その代表的な「リファラル採用」と「アルムナイ採用」を紹介しよう。

リファラル採用
社員の人脈を有効活用


リファラル(referral)は紹介や推薦といった意味をもつ英単語で、転じてリファラル採用は、自社の社員や外部の専門家が候補者を紹介・推薦する採用手法を指す。採用担当者以外の社員もリクルーターとなるため、社員紹介採用とも呼ばれている。

リファラル採用の一番のメリットは、採用コストを大幅に低減できること。既存社員の人脈から候補者を“発掘”するため、求人広告費をかけずに済む。それ以外にも自社に合う人材を採りやすい、定着率が高い、自社や自社の業界に無関心だった人にも振り向いてもらえるなどの利点がある。

一方で大量採用に向かない、入社までに時間がかかるといった難点がある。これは許容するほかないが、最大のデメリットは候補者が望まない人材だった場合だ。対応を誤れば、候補者を紹介するために奔走した既存社員のエンゲージメントが低下する。

多くの中小企業のリファラル採用を支援しているリファラルリクルーティング(東京都中央区)の白潟敏朗社長は、「妥協して採用してしまうと辞めさせづらいという問題に変わるだけ。こうしたリスクも十分に把握して、体制を整えるべき」と指摘する。

諸刃の剣ともいえるが、リスクを回避しながらメリットを追う方法はある。現にリファラル採用を制度として整えている企業は7割以上、検討を含めれば86%に及ぶ(リクルートキャリア調べ)。押さえるべき採用手法の一つであることは間違いない。

アルムナイ採用
退職者は会社の資産


アルムナイ(alumni)は卒業生や同窓生を表す英単語で、ビジネスシーンでは退職者を表す語として使われている。つまりアルムナイ採用とは、一度退職した人を再び雇う手法のことだ。これも低予算で人材を採用できる。自社での就業経験があるため、教育にかける時間と労力もカットできる。

アルムナイ採用を成功させるには、退職したアルムナイと良好な関係を保ち続けることが重要になる。絶対条件は円満退職。その上で、一部の社員が連絡先を個別に知っているという状態から、企業として退職者と体系的につながっている状態(アルムナイ・リレーション)を構築しなければならない。

近年はホール企業もカムバック制度を設けているが、これも良好なアルムナイ・リレーションがあればこそ。より効果を高めるにはアルムナイの個別具体的な状況を把握し、「また働きたいな」と思ってもらえるタイミングでアプローチすることだ。

ただしアルムナイを雇用するためだけの母集団と捉えることは早計だ。アルムナイ・リレーションのコンサルティングを手掛けるハッカズーク(東京都新宿区)の鈴木仁志CEOは、「再び雇用することはアルムナイ・リレーションの結果の一つに過ぎない」と指摘。企業ブランドの毀損を避けながら価値の維持・向上に努め、自社のファンや顧客のすそ野を広げるために取り組むBtoC企業が大半だという。

とはいえ低予算で採用できるのであれば、それに越したことはない。彼らが辞めたときよりもずっと働きやすい環境であることを伝えられれば、可能性はぐっと高まるだろう。


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